ADC値は下垂体腺腫のMib-1値と逆相関する

Vol.2, No.2, P.12 公開日:

2017年4月22日  

最終更新日:

2020年12月13日

Apparent diffusion coefficient and pituitary macroadenomas: pre-operative assessment of tumor atypia.

Author:

Tamrazi B  et al.

Affiliation:

Department of Radiology, University of California San Francisco, 505 Parnassus Avenue, M-391, San Francisco, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:27734275]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2017 Apr
巻数:20(2)
開始ページ:195

【背景】

神経膠腫などの脳腫瘍ではADCが低いものでは組織学的にMib-1値が高く,悪性度が高くなるのはよく知られているところである.下垂体腺腫は一般にMib-1は3%以下であるが,中には3%を越えるものもあり,その中には異型腺腫とよばれ浸潤性や再発を示すものがある.通常の画像診断で異型腺腫を予想することは困難であるが,ADCがその指標になるかも知れない.UCSF放射線科のTamrazi Bらは17例のmacroadenomaにおけるADC値とMib-1値の相関を求めた.

【結論】

ADC率(normalized ADC ratio;腺腫のADCを病変と反対側白質のADC値で除した値)とMib-1値の相関を求めた.浸潤性腺腫ではADC率は0.68でMib-1は2.21%.非浸潤性腫瘍ではADC率は1.05でMib-1は0.9%.線形回帰分析ではADC率とMib-1はp=0.003,correlation coefficient=0.77,r2=0.59で逆相関していた.

【評価】

そうでしょうという結果である.術前のADC率でMib-1値・浸潤性が予測できれば,手術戦略にも影響する. むしろ,これまでに類似の研究は世界中で実施されたはずで,このように明瞭な逆相関が出ていなかった点にこそ,本質的な問題点が潜んでいると考えるべきである.
本論文の問題点としては,浸潤の定義があいまいなこと,手術所見なのか,画像所見なのか.また,ADC ratioで評価しているが,白質のADC値は高齢者で高くなるので,ADC ratioが腫瘍の拡散制限を反映しない可能性が高くなる.むしろ,腫瘍のADC絶対値を用いるべきであろう.ADC ratioとMib-1の逆相関を明瞭に示しているが,下垂体腺腫のように元来0〜3%に集蔟するような良性の腺腫で,また少ない症例数で,このように明確な相関が出るのか,多数例での追試が必要である.従来は,下垂体腺腫の浸潤性とMib-1値に相関はないとする報告も多いが,ADCでは相関が出たことについての考察も必要であろう.
幾つかの問題が指摘出来る論文であるが,術前MRI所見と下垂体腺腫の増殖能・浸潤能との関係は臨床的には極めて重要なテーマであり,今後も様々なパラメーターを用いて検討される必要性がある.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

山崎文之

参考サマリー