神経膠芽腫患者に対する抗けいれん剤の選択:バルプロ酸やレベチラセタムに優位性があるのか

公開日:

2016年8月8日  

最終更新日:

2017年9月23日

Does Valproic Acid or Levetiracetam Improve Survival in Glioblastoma? A Pooled Analysis of Prospective Clinical Trials in Newly Diagnosed Glioblastoma

Author:

Weller M  et al.

Affiliation:

University Hospital Zurich, Switzerland

⇒ PubMedで読む[PMID:26786929]

ジャーナル名:Journal of Clinical Oncology
発行年月:2016 Mar
巻数:34(7)
開始ページ:731

【背景】

これまで,バルプロ酸が新規神経膠芽腫の生存期間を改善させるという,いくつかの報告がされてきた.このことを検証するために,最近実施された4つの前向きランダム化研究(AVAGlio, CENTRIC, CORE, RTOG0825)に登録された患者プールの解析を行った.バルプロ酸使用群と非使用群で無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を比較した(n=1869).

【結論】

放射線化学療法開始時におけるバルプロ酸の使用はPFSあるいはOSともに改善にはつながらなかった.バルプロ酸が開始時に使用され,かつ放射線化学療法後も使用を継続していた患者群でもPFSあるいはOSは抗けいれん剤非使用群と差がなかった.同様に,レベチラセタムの使用の有無でも差はなかった.この研究結果は,新規神経膠芽腫患者に対するけいれんコントロール以外の理由でバルプロ酸やレベチラセタムの使用を正当化しないものとなった.

【評価】

本論文の責任著者のWeller Mらは,かつて新規膠芽腫患者に対する放射線+テモゾロミド vs. 放射線の3つの臨床治験のデータから,治療開始時に酵素非誘導型抗けいれん剤であるバルプロ酸投与群のほうが,酵素誘導型抗けいれん剤(phenytoin, phenobarbital, carbamazepine)投与群あるいは抗けいれん剤非投与群に比較して有意に生存期間が長いことを報告した(Weller M, Neurology 77:1156-1164, 2011).この後,同様の報告が続いた.メカニズムとしては,バルプロ酸がテモゾロミドの生物活性を高める可能性や,ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)阻害作用が推定されてきた.HDACs阻害薬は白血病などで再分化や癌抑制遺伝子p53, p21の発現を誘導して細胞周期を停止させたり,アポトーシスを誘導することが知られており,癌治療への応用が始まっている.しかし,本研究結果は,少なくとも悪性神経膠腫に関する限り,こうした期待を打ちくだく結果となった.先行研究との結果の違いについては先行研究が,後ろ向き研究のデータに基づいていたこと,サンプルサイズが小さかったこと,バルプロ酸使用期間は容量に関するデータがほとんどなかったことをあげている.

執筆者: 

有田和徳

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