小児期発生良性グリオーマに対する早期放射線治療は長期追跡中の死亡リスクを高める

公開日:

2016年8月30日  

最終更新日:

2017年6月9日

Clinical and treatment factors determining long-term outcomes for adult survivors of childhood low-grade glioma: A population-based study.

Author:

Uri Tabori  et al.

Affiliation:

Division of Hematology/Oncology, Hospital for Sick Children, University of Toronto, 555 University Avenue, Toronto, Ontario, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:26970559]

ジャーナル名:Cancer.
発行年月:2016 Apr
巻数:122(8)
開始ページ:1261

【背景】

小児低悪性度神経膠腫(PLGG)は小児で最も頻度の高い脳腫瘍であり多くは成人まで生存するが,長期予後に影響を与える因子は何か.カナダUniversity of TorontoのTaboriらは,オンタリオ州の0〜18歳のPLGG患者を対象に後向きコホート研究を行った(n=1,202).

【結論】

中央値12.7年の追跡期間中,PLGG患者の死亡例は7.7%のみで,20年後の全生存率は90.1±1.1%であった.小児神経線維腫症1型(NF1)患者の生存は良好で,腫瘍による成人期の死亡は認められなかった.腫瘍部位が視床であること(p<.001)および多形黄色星細胞腫(p<.001)が危険因子であった.また,診断より5年以上生存した残存腫瘍のある患者では,早期の放射線治療(診断後1年以内)は全死亡リスクを約3倍(HR, 3.3;p=.001),腫瘍関連の死亡リスクを約4倍(HR, 4.4;p=.013)増加させた.多変量解析では放射線治療は成人期の全死亡(HR, 3.0;p=.012)および腫瘍関連死(HR, 4.4;p=.014)と最も関連する因子であった.PLGGの長期予後は優れているが,早期放射線治療を受けると成人期の死亡率が上昇する.

【評価】

成人の低悪性度神経膠腫と違い,PLGGが悪性転換することは稀であり生存率も高い.一方,早期放射線によって死亡リスクが上昇するので早期放射線照射には慎重であるべきという報告である.この研究結果はPLGG患者の治療方針決定の際に考慮すべきである.しかし,現場の悩みとしては,手術後の残存腫瘍が大きい場合の補助治療をどうするのか,①経過観察するのか,②何か化学療法を行うのか,③早期の腫瘍増大例をどうするのかなど悩みはつきない.さらに,1p/19q欠失,IDH-1,2変異,BRAF変異などの分子遺伝学的プロファイルと放射線照射の得失との関係は今後の課題である.本観察研究では,従来予後不良と報告されていたpilomyxoid astrocytomaの生命予後が意外と良いという発見もあった.

執筆者: 

宇田川梨紗   

監修者: 

有田和徳

関連文献


メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する