低悪性度神経膠腫に対するcarboplatinとvincristineの有効性 (NF1対非NF1)

Vol.1, No.2, P.4 公開日:

2016年9月21日  

最終更新日:

2021年1月7日

Nonrandomized comparison of neurofibromatosis type 1 and non-neurofibromatosis type 1 children who received carboplatin and vincristine for progressive low-grade glioma: A report from the Children's Oncology Group.

Author:

Ater JL  et al.

Affiliation:

Division of Pediatrics, The University of Texas MD Anderson Cancer Center

⇒ PubMedで読む[PMID:27061921]

ジャーナル名:Cancer.
発行年月:2016 Jun
巻数:122(12)
開始ページ:1928

【背景】

テキサス大学のAterらは,小児がん研究グループに登録された進行性の低悪性度神経膠腫(LGG)をもつNF1患者と非NF1患者においてcarboplatin(COG A9952)+vincristine (CV)治療の効果を比較した(NF1群 n=127;非NF1群 n=137).

【結論】

NF1群の33%にイベントが発生し,4.7%が死亡した.5年後の無イベント生存率(EFS)は,NF1群で69±4%,非NF1群で39±4%であった(p<.001).単変量解析では,NF1群で腫瘍反応率,EFS,全生存率(OS)は非NF1群より有意に高かった.多変量解析では,NF1群は独立してより良いEFSと関連していた(p<.001)が,OSとの関連は認められなかった.治療開始から中央値7.8年で,NF1群において二次性の悪性腫瘍が3例認められ,非NF1群では認められなかった.

【評価】

小児神経線維腫症1型(NF1)患者の15〜20%は視交叉など視路のグリオーマを小児期早期に発症する.その多くをpilocytic astrocytomaが占め,大部分は治療を要しないきわめて不活発な腫瘍であるが,時に進行性で,有症候化する.その局在から手術は困難で,放射線照射も小児期の脳に対する副作用の危惧から避けられてきており,現在,初期治療としては化学療法,特にCVの使用が一般的になってきている.
本研究はLGGを有する小児NF1患者のCVに対する忍容性は良好で,腫瘍反応率および無事象生存率は非NF1患者よりも優れているという報告である.ただし,本論文の考察でも触れられているようにNF1患者における低悪性度神経膠腫のなかには長期間増大しないものや,むしろ自然経過の中で縮小(spontaneous involution)するものもあるので,これがCV治療を受けたNF1患者群における無事象生存率を引き上げている可能性は否定できない.2017年現在,NF1に伴う低悪性度グリオーマに対する治療として,vinblastineやbevacizumab,irinotecanなどの効果を検証する研究が進行している.

執筆者: 

宇田川梨紗   

監修者: 

有田和徳

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