COVID-19による中枢神経障害:レビュー

公開日:

2020年4月9日  

最終更新日:

2021年7月16日

Nervous System Involvement After Infection With COVID-19 and Other Coronaviruses

Author:

Wu Y  et al.

Affiliation:

Department of Anethesiology and Perioperative Medicine, The First Affiliated Hospital of Nanjing Medical University, Nanjing, China

⇒ PubMedで読む[PMID:32240762]

ジャーナル名:Brain Behav Immun
発行年月:2020 Mar
巻数:[Online ahead of print]
開始ページ:

【背景】

本論文はCOVID-19やその他のコロナウイルス(SARS,MERS)による中枢神経障害に関する中国からの報告である.
コロナウイルスの中枢神経への到達経路としては血流(菌血症),嗅神経,末梢神経からの侵入が考慮されている.その他の中枢神経障害の原因としては低酸素血症とSIRSなど全身性の免疫・炎症反応に起因する神経障害が挙げられる.またウイルスがACE2受容体と結合することによる血圧上昇やBBBの破壊も関係する可能性がある.
実際にCOVID-19ではどうなのか.著者らは先行する武漢のMao Lらの報告を引用している(文献1).

【結論】

Maoらの報告によればCOVID-19で入院した患者214人のうち74人(36.4%)が何らかの神経症状を呈し,その中にはめまい(16.8%),頭痛(13.1%),意識障害(7.5%),脳卒中(2.8%),味覚障害(5.6%),嗅覚障害(5.1%),筋肉症状(10.7%)が含まれており,これらの症状は重症者(全体の41.1%)ほど多かった(文献1).これらの神経症状は他のCOVID-19の症状に先行することがあった.最近,北京市Ditan病院からCSFの遺伝子検索によって診断確定された脳炎の報告があった(文献2).

【評価】

日本でも山梨県の20歳代男性で髄膜炎が確認されたことがメディアで報道された.
本サマリーの執筆者は2020年4月1日に,COVID-19の神経症状に関して,pubmedで,COVID-19 & brain,neuro-,central nervous systemなどで検索したが,唯一ヒットしたのが本論文で,掲載誌のBrain Behavior and ImmunityはIF6-7点のジャーナルである.
まだまだ,情報量は少ないが,今後COVID-19の中枢神経障害,症状に関する報告は一気に増加する可能性がある.一方で,情報の信頼性については注意が必要と思われる.
いずれni
せよ,感染によって賦活された中枢神経内免疫細胞による晩期障害の可能性も否定出来ず,COVID-19既感染者の長期経過観察は必須と思われる.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー