膠芽腫患者の3年生存率は10.5%に過ぎない:米国癌登録(NCDB)88,919例の実態解析

公開日:

2020年6月3日  

最終更新日:

2020年6月5日

Improved 3-year Survival Rates for Glioblastoma Multiforme Are Associated With Trends in Treatment: Analysis of the National Cancer Database From 2004 to 2013

Author:

Zreik J  et al.

Affiliation:

Mayo Clinic Neuro‑Informatics Laboratory, Department of Neurologic Surgery, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32363470]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2020 May
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

膠芽腫に対する様々な新規治療の組み合わせが提案され,生命予後を改善出来るとの報告も多い.しかし,治験レベルの話ではなく,実臨床現場(real world)で膠芽腫患者の生命予後が改善しているのかは明らかでない.また治療の組み合わせや患者の社会背景が生命予後に与える影響も不明であった.Mayoクリニックのチームは米国癌登録(NCDB)に2004~2013年に登録された88,919例の膠芽腫の解析を通じてこれらの問題を検討した.

【結論】

8,757例(9.8%)が3年以上生存した.3年生存率はこの期間で8.0から10.5%に改善した(p<0.001).この期間,三者組み合わせ(手術+放射線+化学療法)治療は38.7から55.9%に増加した(p<0.001).一方,患者はより高齢になり(p=0.040),私的健康保険加入者の割合は少なくなり(p<0.001),併存疾患は多くなった(p<0.001).多変量解析では三者組み合わせ治療 (p<0.001),若年(p<0.001),MGMTメチル化(p<0.001)が,3年生存率の向上と相関した.

【評価】

著者らは,この解析によって,米国では高齢,併存疾患率など膠芽腫患者の生命予後にとっては不利な患者割合が増えているにもかかわらず,この期間(2004~2013年)において,3年生存率は8.0%から10.5%に向上しており,これはくテモゾロミドによる化学療法を含む三者組み合わせ治療(trimodal treatment)の普及と一致していると言う.
しかし,2.5%も伸びたと考えるべきなのか,2.5%しかの伸びなかったと考えるべきなのか判断は難しい.少なくとも,3年生存率が10.5%という実態は世界の先進施設から報告されている治療結果(3年生存率:20~40%)とは大きくかけ離れている.ちなみに,この期間に生存期間中央値も7.5ヵ月から9.7ヵ月に改善はしている(p<0.001)が,1年には達していない.
多変量解析では,3年生存の向上と最も相関していたのは三者組み合わせ治療で(OR:2.87,p<0.001),女性(OR:1.30,p<0.001),黒人(OR:1.25,p=0.001),ヒスパニック(OR:1.64,p<0.001)がこれに続いていた.
一方,3年生存の低下と相関していたのは,高齢(p<0.001),無保険(p=0.015),Medicaid (p<0.001),Medicare(p<0.001),高いCharlson/Deyo併存疾患スコア(p<0.001),腫瘍の進展(相対に広汎性の腫瘍が多い,p<0.001),腫瘍の存在部位(p<0.001),放射線照射単独(p=0.002)であった.
膠芽腫において,若年,女性,非白人で3年生存が高いというのは,過去の報告と一致している(文献1,2).
2005年のStuppレジメのRCTの報告以来,手術+放射線+テモゾロミドは現段階における膠芽腫治療のゴールドスタンダードであるが(文献3),米国では2013年度においても三者組合わせ治療が56%にしか実施されていないというreal worldの実態に少し驚いた.著者等はこの理由について言及していないが,もしかして,米国が未だ国民皆保険になっていないこと,MedicaidやMedicareの患者が多いことと関係しているのかも知れない.実際,3年生存に至った患者では至らなかった患者に比べて私的健康保険の加入者の割合は高かった(64.5% vs 42.6%;p<0.001).
新規治療のレジメの開発も重要であるが,国民医療レベルで考えれば,少なくとも米国において,先ずは全ての膠芽腫患者が標準治療を受けることが先決であるように見える.著者等は,膠芽腫患者がテモゾロミドを含む三者組み合わせ治療を受けることが出来るよう,アクセスを最大化することがより強調されるべきだと結論している.

執筆者: 

有田和徳

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