髄膜腫の成長速度と成長曲線:T2信号と石灰化の意義

公開日:

2024年8月26日  

最終更新日:

2024年8月29日

Velocity and pattern of growth of intracranial meningiomas

Author:

Häni L  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Bern University Hospital (Inselspital), University of Bern, Switzerland

⇒ PubMedで読む[PMID:39126728]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2024 Aug
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

髄膜腫の成長速度,またその成長曲線については未解明な部分が多い.ベルン大学脳外科は2003-2015年に診断し,最低6ヵ月間経過観察した髄膜腫240例の成長曲線を求めた.対象の腫瘍を,本稿著者らの以前の研究結果に基づいて(文献1),MRIのT2信号が等-高信号で石灰化のない高リスク群131例(54.6%),T2が等-高信号で石灰化を有する中間リスク群65例(27.1%),T2が低信号の低リスク群44例(18.3%)に分けた.
平均追跡期間は46.9±30.1(SD)ヵ月であった.全240例の平均腫瘍径の成長速度(VDE)の中央値は0.33 mm/年であった.

【結論】

各リスク群毎のVDE中央値は高群0.49,中間群0.35,低群0.05 mm/年で有意差があった(p <.001).指数関数的な成長を示した腫瘍の割合は高群43.8%,中間群37.0%,低群8.3%であった(p =.067).高群と中間群を併せて低群と比較すると,指数関数的な成長を示した腫瘍の頻度は高+中間群で有意に高かった(41.8% vs 8.3%,p =.028).
43例は経過観察中に摘出術を受けた(WHOグレード1:38例,グレード2:5例).VDEはWHOグレードの2群間で有意差がなかった(グレード1:1.30 vs グレード2:4.01 mm/年,p =.185).

【評価】

経過観察中の髄膜腫の増大と相関する因子としては,従来,若年,大型, 石灰化の不在,MRIのT2が高信号,T2が等-高信号,周囲の浮腫, 低いCT Hounsfield Unit,低いrADC,女性,男性(発生部位によって)などが報告されている(文献2,3,4,5).本研究は,これら諸因子のうち,髄膜腫の増大因子として広く受け入れられているT2等-高信号と石灰化の不在を取り上げ,この2つの因子の組み合わせで成長リスクを3群にわけ,実際の腫瘍成長速度との関係を求めたものである.この結果,平均腫瘍径の成長速度(VDE)は,T2等-高信号で石灰化のない高リスク群で最も速く(0.49 mm/年),T2が等-高信号で石灰化を有する中間リスク群がそれに続き(0.35 mm/年),T2が低信号の低リスク群では成長はほとんど認められなかった(0.05 mm/年).すなわち,高リスク群と中間リスク群にあまり差はなく(p =.076),低リスク群は高リスク群・中間リスク群と比較して大きな差があることがわかる(p <.001).同様に,指数関数的成長曲線を示す腫瘍の割合も高リスク群と中間リスク群で差はなく(43.8% vs 37.0%),低リスク群はこれら2群に対して大きな差を示した(41.8% vs 8.3%,p =.028).
これらのデータを見ると,髄膜腫経過観察症例の約2割を占めるT2が低信号の低リスク群はかなりindolentな腫瘍群であることがわかる.
一方,半年以上の経過観察後に摘出を行った43例では,WHOグレード1の腫瘍とグレード2の腫瘍間には,VDE上の差はなかったというが(p =.185),グレード1の1.30 mm/年に対してグレード2は4.01 mm/年で,症例数が増えれば有意差が出るのかも知れない.

執筆者: 

有田和徳