破裂したSMグレードIV-Vの脳動静脈奇形をどうすべきか:ジョンズ・ホプキンズ大学における84例

公開日:

2024年11月16日  

Natural history and management outcomes of patients with ruptured Spetzler-Martin grade IV and V brain arteriovenous malformations

Author:

Sattari SA  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, The Johns Hopkins School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:39423432]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2024 Oct
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

破裂したSMグレードIV-Vの脳動静脈奇形(AVM)は稀で,その適切な治療方法は確立していない.ジョンズ・ホプキンズ大学脳外科は,自験の破裂したSMグレードIV-VのAVM84例(平均年齢29.2歳,男女ほぼ同数)を後方視的に解析して,自然史,治療効果,予後を左右する因子などを求めた.AVMの存在部位は大脳深部と大脳皮質がほぼ同数.初発症状は頭痛70%,麻痺23%,意識消失15%であった.45例が定位手術的照射を,17例が摘出手術を,5例が塞栓術のみを受け,17例が保存的に加療された.平均追跡期間は11.8年で,その間に38%のAVMが閉塞した.

【結論】

保存的加療が行われた17例と各治療群における治療実施までの未治療期間を合わせると未治療期間は総計465人・年で,この間に22例が破裂した.すなわち自然史における年間再破裂率は4.73%であった.
皮質AVMでは,自然史での年間再破裂率は2.68%であったが,手術は0.74%に低下させ,逆に定位手術的照射は5.35%まで,塞栓術のみは16.96%まで増加させた.
深部AVMでは,自然史での年間再破裂率は8.37%であったが,手術は5.25%に,定位手術的照射は3.11%に低下させた.逆に塞栓術のみは22.33%まで増加させた.
ポアソン回帰分析では,塞栓術単独は皮質,深部ともAVMの再破裂リスクを増大させた.ロジスティック回帰解析では,手術と定位手術的照射が深部AVM閉塞の独立した予測因子であった.

【評価】

SMグレードIV-VのAVMは脳全体のAVMの10-20%を占めるが,その治療は一般に困難であり,適切な治療法については定まっていない(文献1-3).
1990年から2020年までにジョンズ・ホプキンズ大学を受診したAVM 1066例のうちSMグレードIV-Vは254例(23.8%)であった.本研究はそのうちから破裂したSMグレードIV-VのAVM84例を抽出して,自然史,治療効果,予後因子を求めたものである.その結果,自然史での年間再破裂率は全体で4.73%,皮質AVMで2.68%,深部AVMで8.37%であり,深部のものでは再破裂率が格段に高いことが明らかになっている.
さらに,手術によって年間再破裂率は皮質AVMで0.74%に,深部AVMで5.25%に低下し,定位手術的照射によって深部AVMの年間再破裂率は3.11%まで低下するが,逆に塞栓術単独は両群とも年間再破裂率を+14%上げてしまうことが明らかになっている.ポアソン回帰分析でも塞栓術単独が再破裂の予測因子であることが証明されている.一方,ロジスティック回帰解析では手術と定位手術的照射が深部AVM閉塞の独立した予測因子であることが証明されている.
これらの結果を見るとSMグレードIV-Vの破裂AVMが皮質に存在する場合は摘出手術が推奨され,定位手術的照射は避けるべきであろうことが窺える.かたや,SMグレードIV-Vの破裂AVMが深部に存在する場合は,定位手術的照射か摘出手術を慎重に選択すべきであろう.いずれの部位でも,塞栓術単独は禁忌ということになろう.塞栓術によって,AVM内の血流動態が急速に変化し,HIF-1α,VEGF,MMP-9が過剰発現することがAVMの破裂を招くことが推測されている(文献4-6).やはりAVM塞栓術は摘出手術や定位手術的照射を行う際の補助的治療と位置づけるべきであろう(文献7,8).

執筆者: 

有田和徳