外減圧後の頭蓋形成術の至適タイミングはいつか?:あまり待たん方が良いかも

公開日:

2025年1月17日  

Optimal Timing of Cranioplasty After Decompressive Craniectomy: Timing or Collapse Ratio

Author:

Huo H  et al.

Affiliation:

Taizhou Fourth People's Hospital, Taizhou, Jiangsu, China

⇒ PubMedで読む[PMID:38888307]

ジャーナル名:Oper Neurosurg (Hagerstown).
発行年月:2024 Jun
巻数:27(6)
開始ページ:715

【背景】

外減圧手術は頭部外傷や脳内出血後の頭蓋内圧亢進に対する有効な治療法として確立している(文献1,2,3).しかし,その後の頭蓋形成術をいつ行うべきかについては十分な合意は得られていない.中国・泰州市第四人民医院脳外科は,2015年以降に種々の理由で外減圧術が行われ,その後に頭蓋形成術が行われた連続266例(平均51.2歳)を対象に,外減圧術後の陥凹率(collapse ratio:陥凹の深さ/骨欠損部の長径)と頭蓋形成術後の合併症の関係を解析した.外減圧術の適応は,外傷性脳損傷(TBI)79%,高血圧性脳出血14%,動脈瘤性脳出血3%などであった.外減圧から頭蓋形成までの期間は中央値90日.

【結論】

平均陥凹率は0.32であった.頭蓋形成後の合併症は56例(21%)で生じた.内訳は硬膜下水腫25例,硬膜外出血10例,水頭症9例,てんかん6例などであった.合併症有り群は無し群と比較して外減圧から頭蓋形成までの期間はやや長かったが有意差は無く(中央値97日 vs 90日,p =.07),陥凹率は有意に大きかった(平均値0.74 vs 0.22,p =.023).ロジスティック回帰解析では陥凹率と頭蓋形成に要した時間が合併症発生の予測因子であった(p =.010とp <.001).ROC解析では陥凹率は合併症発生をAUC:0.621で予測した.カットオフ値0.274では感度63%,特異度63%であった.

【評価】

種々の疾患による頭蓋内圧亢進に対する外減圧手術後の頭蓋形成術をいつ行うべきかについては議論が多い.外減圧部の皮膚の沈下による脳機能低下(sinking skin flap syndromeあるいはsyndrome of the trephined)を避ける意味で早期の頭蓋形成を行うべきとする主張もあるが(文献4),感染や水頭症の発生リスクが高いとの理由から早期の頭蓋形成は避けるべきとの主張もある(文献5).
本研究は,外減圧部の脳の沈下度(陥凹率:collapse ratio)と頭蓋形成術後の合併症の頻度との関係を基に,頭蓋形成術の至適タイミングを検討したものである.合併症の内訳は硬膜下水腫が最多で25例,硬膜外出血10例,水頭症9例,てんかん6例が続いたが,感染は意外と少なく1例(全体の0.4%)に過ぎなかった.解析の結果,頭蓋形成術後の合併症が無い群では合併症が有る群と比較して,陥凹率が有意に低かった.
一方で,有意ではないものの,頭蓋形成術後の合併症が無い群では合併症が有る群と比較して,外減圧から頭蓋形成までの期間はやや短かかった.ちなみに全症例では,外減圧から頭蓋形成までの期間の中央値は90日で,IQRが84.75-120.0日であるから,およそ90日前後に集中していることになる.これは,歴史的に外減圧後3ヵ月前後での頭蓋形成が推奨されてきたことを反映しているのかもしれない(文献6,7,8).
一般的に,外減圧後,患者が起座位,さらに立位となり,リハビリテーションが進行するとともに外減圧部の陥凹は目立ってくる.本研究の結果に基づけば,外減圧後は従来のように3ヵ月も待つ必要はなく,還納骨弁(あるいは代用骨)で脳が圧迫されないと判断されれば,外減圧部の陥凹が目立たないうちに頭蓋形成を行うべきだということになりそうである.より多数例での前向き試験で検証されるべき提言である.

執筆者: 

有田和徳