脳室内出血には脳室ドレナージ単独よりも内視鏡下血腫除去+脳室内洗浄の方が予後が良い:中国・湖北大学の98例のRCT

公開日:

2025年1月29日  

最終更新日:

2025年1月30日

Analysis of the Efficacy of Neuroendoscopic Hematoma Removal Combined With Ventricular Lavage in Severe Intraventricular Hemorrhage-A Prospective Randomized Controlled Study

Author:

Qu X  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Renmin Hospital, Hubei University of Medicine, Hubei, China

⇒ PubMedで読む[PMID:38847532]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2024 Dec
巻数:95(6)
開始ページ:1297

【背景】

脳室内出血に対する外科的治療法として標準的なのは脳室ドレナージであるが,施設によっては脳室ドレナージ+脳室内tPA投与や(文献1),IRRAフローシステムを用いた持続的な灌流+ドレナージも行われている(文献2).一方で,重症の脳室内出血に対する内視鏡下血腫除去術も急速に普及しつつあるが(文献3,4),その評価は十分に定まっていない.中国・湖北大学脳外科は,入院時GCS <13の重症の脳室内出血98例を,脳室ドレナージ(対照群:49例)と経前頭・内視鏡下血腫除去+生食500 mLによる脳室内洗浄+ドレナージ(内視鏡群:49例)に無作為に割り付けたRCTを行った.全例が割り付け通りの治療を受けた.

【結論】

内視鏡群の方が術中出血量は僅かに多かったが,ドレーン留置期間は短く(p <.001),在院日数は短かった(p <.001).
内視鏡群の方が,手術後6時間,1日,3日,7日までの血腫除去量は大きかった(p =.021,p =.002,p <.001,p =.007).髄液排出量は,手術後1日,3日目は内視鏡群の方が多かったが(p <.001),7日目では内視鏡群の方が少なかった(p <.001).内視鏡群の方が,頭蓋内感染の頻度は低く(p =.045),頭蓋内圧亢進の頻度も少なかった(p =.008).
発症6ヵ月目のmRS ≤4の頻度は内視鏡群で高かった(79.6% vs 59.2%,p =.004).

【評価】

本研究は重症の脳室内出血を対象としたRCTで,98例の患者を対照群(脳室ドレナージのみ)と内視鏡手術群(血腫除去+脳室内洗浄+脳室ドレナージ)に同数ずつ振り分けている.両群間で性・年齢・併発症・術前GCS・BMI・喫煙歴・飲酒歴などに差はなかった.
その結果,対照群に比較して内視鏡手術群の方が発症後早期に血腫除去が達成でき,3日までの髄液ドレナージの量も多く,頭蓋内感染の頻度は低く,頭蓋内圧亢進の頻度も少ないことが明らかになった.水頭症の発生も,有意ではないが内視鏡群で少なかった(2% vs 12%,p =.050).さらに発症6ヵ月目の機能予後良好(mRS:0,1)は内視鏡群で高く(32.7% vs 14.3%),最悪の転帰(mRS:5,6)は内視鏡群で低い(20.4% vs 40.8%)ことも示している.
そうだろうねという結果である.早期の血腫除去によって血腫周囲の脳組織への早期の減圧が達成されると同時に,血腫すなわち炎症性サイトカインなどの有害物質の供給源も排除できるためであろう.重症の脳室内出血に対する従来の脳室ドレナージと比較した内視鏡下血腫除去+洗浄手術の優位性は,本研究で明瞭に示されていると思われるが,近年導入されてきたIRRAフローシステムなどのデバイス(文献2)を用いた持続的な脳室内潅流+ドレナージとの比較は今後の課題と思われる.

執筆者: 

有田和徳