髄膜腫の経過観察には造影MRIは不要でT2強調MRIだけで良い:メルボルン市セントビンセント病院の136例

公開日:

2025年2月25日  

Noncontrast imaging for the surveillance of treated and untreated meningiomas

Author:

Nguyen LV  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery and Medical Imaging Department, St Vincent's Hospital Melbourne, Fitzroy, Victoria, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:39889285]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2025 Jan
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

髄膜腫の手術前あるいは手術後の経過観察では,腫瘍の増大や再発の検出精度を高めるべく造影MRI検査を行うことが多い(文献1,2).しかしガドリニウム造影剤は高価であり,脳に蓄積し,かつ身体への有害事象も報告されている(文献3,4).
メルボルン市セントビンセント病院脳外科は髄膜腫の経過観察における造影MRIの必要性を検討するため,T2強調MRIとの後方視的な比較を行った.対象は,手術後の髄膜腫65例と治療前の髄膜腫71例,合計136例.
6ヵ月以上の間隔をおいて実施された3T-MRI検査におけるT2強調MRI像と,造影MRI像+T2強調MRI像の読影結果を比較し,腫瘍増大の検出能などを評価した.

【結論】

MRIは神経放射線科専門医と放射線科研修医(5年目)が読影した.
腫瘍の増大はT2強調MRIでは36個(26.5%),造影MRI+T2強調MRIでは39個(28.7%)で検出された.
腫瘍の増大診断率はT2強調MRIと造影MR+T2強調MRIでほぼ一致していた(一致率κ =0.945).T2強調MRIの腫瘍増大の診断精度は 97.8%,特異度100%,感度92.3%であった.
腫瘍の前後径,横径に関する検者間一致度は優良であった(ICC >0.843).
腫瘍の静脈洞浸潤の診断は造影MRI+T2強調MRIでは33.8%,T2強調MRIでは24.3%であった(一致率κ =0.771).

【評価】

著者らはこの結果を受けて,T2強調MRI単独は実臨床上,腫瘍の増大の検出,腫瘍サイズの評価において,造影MRI+T2強調MRIと同等の精度と信頼度を有していると結論している.一方静脈洞浸潤については,T2強調MRI単独では検出率が低い点に注意が必要である.ただし,髄膜腫の経過観察の主要な目的である腫瘍増大の検出率に関しては,T2強調MRI単独はゴールド・スタンダードである造影MRI+T2強調MRIと比較してほぼ同一であった(26.5% vs 28.7%).少なくとも,髄膜腫の経過観察の主目標はT2強調MRI単独で達成できるということになる.
ただし,これは3T-MRI機器(本研究ではSkyra,Siemens)を用いたらという前提であり,1.5T-MRIでもそうであるかは不明である.いずれにしても,今後3T-MRIの普及が進めば,髄膜腫の経過観察における高価かつ健康リスクがある造影剤の使用は,初回検査を除けば大幅に減少するものと思われる.

執筆者: 

有田和徳