Zabramskiの分類に基づく脳海綿状血管腫の臨床像と予後: フィンランドにおける775例の追跡結果から

公開日:

2025年3月13日  

Clinical and radiological presentation of cavernomas according to the Zabramski classification

Author:

Saari E  et al.

Affiliation:

Department of Clinical Medicine, Hemorrhagic Brain Pathology Research Group, Tampere University, Tampere, Finland

⇒ PubMedで読む[PMID:39889293]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2025 Jan
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

現在,脳海綿状血管腫では,Zabramskiらが1994年に発表したMRIによる4つのタイプへの分類(タイプ1,2,3,4)が最も一般的である(文献1).ただし,この画像分類と臨床像や予後との関係は充分にはわかっていない.本稿はフィンランドの人口の40%をカバーする二つの三次医療センター(クオピオ大学・タンペレ大学)で過去約25年間に診断された775例(859個)の脳海綿状血管腫の横断的後方視的解析である.局在は天幕上77%,小脳16%,脳幹10%であった.症状で最も多かったのはけいれん21%で,続いて頭痛11%であった.59%は無症状であった.家族歴は1.3%であった.

【結論】

タイプ別ではタイプ2が最多で54%を占め,タイプ3は26%,タイプ1は13%,タイプ4は8%であった.タイプ1は88%が症候性で,タイプ2,3は6-8割が無症候性,タイプ4は全例無症候性であった.タイプと年齢は有意に相関し,タイプ1は相対的に若年であった(p<.05).
全症例では,10年以上の追跡期間で5.3%だけが新規症状を呈した.タイプ1の患者では,他のタイプに比べて新規症状を呈しやすく(p <.01),1年以内に15%が,長期経過観察では26%が新規症状を呈した.長期経過観察では,タイプ1の海綿状血管腫の81%はタイプ2か3に変化し,タイプ2か3のうち2.3%がタイプ1に変わった.

【評価】

最近のMRIの普及によって,脳海綿状血管腫が偶然に発見される頻度は増加している(文献2,3).このことは,これらの無症候性の脳海綿状血管腫を臨床医がどのように取り扱うべきかという課題を突き付けることになっている.脳海綿状血管腫の画像分類で主流となっているZabramski分類では,脳海綿状血管腫をType 1(急性期あるいは亜急性期出血を示す病変:T1で高信号,T2で低信号か高信号),Type 2(中心部はポップコーン様:T1,T2ともに高・低ミックス信号,周辺部はT2*低信号のヘモジデリン・リング),Type 3(慢性期出血:T1,T2とも低信号),Type 4(T2*かSWIのみで低信号を呈する複数のマイクロブリーズ)の4つのタイプに分けている.
本稿は,過去25年間にフィンランドの二つの大学病院で診断した775症例の脳海綿状血管腫を後方視的に解析したものであるが,タイプ毎で臨床像と予後が大きく違うことを明らかにしている.臨床医にとって特に気になるのは新規症状出現のリスクであるが,10年以上の長期の経過観察で新規症状を呈したのは,タイプ1で26%,タイプ2で7.5%,タイプ3で3.7%,タイプ4では0%であった.
すなわち,脳海綿状血管腫の長期予後はMRIに基づく画像タイプ毎で大きく異なることが判る.ただし過去には,タイプ4が出血を起こし,有症候化し,タイプ2,3に変化したとの報告もあるので(文献4),全く警戒不要というわけではなさそうである.
従来から,脳海綿状血管腫はその存在部位によって出血率(症候化率)が異なり,特に脳幹部では他部位と比較して出血率が高いことが知られている(文献5).本研究で明らかになったMRI画像タイプ毎の症候化率が,さらに部位毎に分けたときにどうなるのか,今後明らかになることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳