血栓回収後の脳内点状出血も危ない:中国4大学の共同研究から

公開日:

2025年3月13日  

Postinterventional Petechial Hemorrhage Associated With Poor Functional Outcome After Successful Recanalization Following Endovascular Therapy

Author:

Ma J  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, The Affiliated Yuebei People's Hospital of Shantou University Medical College, Shaoguan, China

⇒ PubMedで読む[PMID:38984821]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2025 Feb
巻数:96(2)
開始ページ:438

【背景】

脳主幹動脈の急性閉塞に対する血栓回収後には梗塞巣の何らかの出血が12-45%で認められる(文献1,2).その中で,塊としての脳実質内出血は神経症状悪化と死亡率増加の因子であることが明白である(文献3,4).一方,点状出血に関しては予後不良因子との報告があるが(文献5,6),むしろ予後良好因子の可能性も報告されている(文献3,7).
本稿は汕頭大学など中国南東部の4大学で実施された後ろ向き研究で,2019年から2021年に前方循環の急性閉塞に対して血栓回収が行われ,mTICI ≥2bの再開通が得られ,塊としての脳実質内出血やタイプ3出血(くも膜下出血)症例を除いた316例を対象とした.

【結論】

49例(15.5%)には点状出血が認められ,267例には認められなかった.
点状出血無し群と比較して点状出血有り群では早期の神経症状改善が少なく(p =.03),90日目の良好な転帰(mRS:0-2)が少なく(33 vs 62%,p <.001),90日目までの死亡率が高かった(29 vs 10%,p =.001).転帰不良(mRS:3-6)の頻度は絶対リスク差29%で点状出血群が高かった.
多変量解析では,点状出血は90日目の良好な転帰と逆相関し(オッズ比 =0.415,95%CI:0.206-0.835),死亡率と相関した(オッズ比 =2.537,95%CI:1.142-5.6355).

【評価】

本研究では,従来,臨床的な位置づけが定まっていなかった脳主幹動脈の急性閉塞に対する血栓回収後の点状出血が,死亡率を高め,機能予後不良と相関することを明らかにした.本研究の結果が正しいとすれば,今後,血栓回収後に点状出血が観察された患者では,より丁寧な経過観察と治療介入が必要ということになる.
従来,点状出血出現のリスク因子としては,血栓回収治療前の高いNIHSSと低いASPECTS,高血糖などが報告されていた(文献5,6,8).本研究の多変量解析では,点状出血出現の独立したリスク因子であったのは高いNIHSS(オッズ比 =1.071,p =.025),低いASPECTS(オッズ比 =0.641,p =.003),加えて不完全再開通(オッズ比 =0.494,p =.036)であった.
興味深い解析結果ではあるが,後ろ向き研究である,未だ症例数が少ないなどの根本的な問題に加えて,最終の梗塞体積が不明,周術期の血圧コントロール状況が不明,使用した血栓回収機器が不明,血栓回収時のパスの回数が不明など,いくつかの交絡因子の可能性が排除されていない.今後,こうした諸因子に配慮した前向き研究で,血栓回収後の点状出血のリスク因子と予後への影響が明らかになることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳

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