公開日:
2025年8月22日最終更新日:
2025年8月24日Transvenous approach: a promising strategy for endovascular treatment of cribriform plate dural arteriovenous fistula
Author:
Xu L et al.Affiliation:
Department of Neurosurgery, Second Affiliated Hospital, School of Medicine, Zhejiang University, Hangzhou, Zhejiang, Chinaジャーナル名: | J Neurosurg. |
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発行年月: | 2025 Apr |
巻数: | 143(2) |
開始ページ: | 505 |
【背景】
篩板部(前頭蓋底)の硬膜動静脈瘻(DAVF)は稀ではあるが,主として高齢男性で発見され(文献1-3),前頭葉皮質静脈に直接流出するため,出血率は58-91%と高率である(文献3-5).このため偶発病変でも治療対象になることが多い.篩板部DAVFに対する治療として,従来は主として直達手術や頚動脈的塞栓術(TAE)が行われてきたが,近年,経静脈的塞栓術(TVE)の有用性に関する報告が散見される.浙江医科大学第二医院の脳外科は2016年から約8年間に血管内治療を実施した篩板部DAVF26例(平均年齢60歳,全例男性,出血例13例,静脈瘤合併15例)を解析した.TAEとTVEは各13例ずつであった.
【結論】
全26例における術直後の完全塞栓率は76.9%(20/26例)で,TAE群53.8%(7/13例),TVE群100%(13/13例)とTVE群が有意に高かった(p =.015).
術中合併症はTAE群では3例(マイクロカテーテルの破損2例,血栓塞栓症1例)に認められたが,TVE群では症候性合併症はなかった.
過去10年間に出版された12報告204例のレビューでも,TVE群はTAE群と比して治療成功率が有意に高く(89.5%[51/57例]vs 74.1%[109/147例],p =.017),症候性合併症の発生率に差はなかった(TVE:7.02% vs TAE:8.84%,p =.784).
【評価】
篩板部DAVFに対する血管内治療としては従来経動脈的アプローチ(TAE)(その多くが眼動脈経由)が多用されてきたが,完全閉塞率は必ずしも満足いくものではなく,網膜中心動脈閉塞や嗅覚障害などの合併症も報告されている.一方,経静脈的アプローチ(TVE)では,流出静脈である大脳皮質静脈経由で,マイクロカテーテルを病変部位ぎりぎりまで接近させる必要がある.問題は①壁が薄く,蛇行している流出静脈の中でガイドワイヤーを前進させる際の静脈穿孔と ②液状塞栓物質(OnyxⓇ)の皮質静脈への逆流や肺塞栓である.著者らは,①に対してはガイドワイヤーの先端をループさせるワイヤーループ法を,②に対してはマイクロカテーテル先端部のやや後方でコイルを巻いた後にOnyxを注入するプレッシャークッカー法(文献6,7)を用いて対処しているという.
その結果,著者らのTVEシリーズ13例では,症候性の合併症はなく,完全閉塞率は100%であった(TAEシリーズ13例では53.8%).これまでに報告された篩板部DAVFに対する血管内治療の204例(TAE 147例,TVE 57例)のレビューでも,治療成功率はTVE群が有意に高いことが示されている.
篩板部AVFに対する血管内治療は,今後TVEが主流となることを予感させるレポートである.多施設での前向き研究で検証されることを期待したい.
<コメント>
中国からのこの報告では,前頭蓋底dAVFに対してTAEよりもTVEの有効性が示唆されている.しかし,現時点ではこの部位のdAVFに対しては依然として開頭術が第一選択とされる.理論的には,開頭術よりも低侵襲で確実なシャント閉塞が得られるのであれば,それに越したことはないと考える.
ただし,TAEでは不完全閉塞や塞栓リスク,TVEではアクセス困難や術中破裂の懸念があり,一方で開頭術では侵襲の大きさや前頭洞開放に伴う感染リスクが問題となるのはこの論文で述べられている通りである.とはいえ,TVEでは流出路のトラップを行うことで比較的容易に治療できる印象がある.この論文で述べられているワイヤーループ法とAVMで時に使用されるプレッシャークッカー法は注目に値するが,それだけで安全に実施できるかは不明である.
今後,デタッチ可能なマイクロカテーテルや塞栓物質の改良といったデバイスの進歩により,時代の流れとしては,前頭蓋底dAVFでも血管内治療への移行が進む可能性が高いと思われる.その結果,開頭術スキルの低下が一層進むことも予想される.
重要なのは,TAEとTVEの比較ではなく,TVEと開頭術の比較だと思われる.しかし,本疾患は稀少であるためRCTの実施は現実的に困難である.したがって,今後はTVE症例を積み重ね,エビデンスを集積していくことが求められる.(鹿児島市立病院脳神経外科 西牟田洋介)
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Sanchez S, et al. Natural history, angiographic presentation and outcomes of anterior cranial fossa dural arteriovenous fistulas. J Neurointerv Surg. 15(9):903-908, 2023
- 2) Dabus G, et al. Endovascular treatment of an terior cranial fossa dural arteriovenous fistula: a multicenter series. Neuroradiology. 63(2):259-266, 2021
- 3) Gross BA, et al. Clinical and anatomic insights from a series of ethmoidal dural arteriovenous fistulas at Barrow Neurological Institute. World Neurosurg. 93:94-99, 2016
- 4) Meneghelli P, et al. Surgical treatment of anterior cranial fossa dural arterio-venous fistulas (DAVFs): a two-centre experience. Acta Neurochir (Wien).159(5):823-830, 2017
- 5) Piergallini L, et al. Anterior cranial fossa dural arteriovenous fistula: transarterial embolization from the ophthalmic artery as first-line treatment. J Neuroradiol. 48(3):207-214, 2021
- 6) Chapot R, et al. The pressure cooker technique for the treatment of brain AVMs. J Neuroradiol. 41(1):87-91, 2014
- 7) Koyanagi M, et al. The transvenous retrograde pressure cooker technique for the curative embolization of high-grade brain arteriovenous malformations. J Neurointerv Surg. 13(7):637-641, 2021
参考サマリー