血管芽腫に対するガンマナイフ治療:193名570個の解析

公開日:

2025年8月22日  

最終更新日:

2025年8月24日

Outcomes After Stereotactic Radiosurgery for Intracranial Hemangioblastoma in Von Hippel-Lindau Disease and Sporadic Cases: An International Multicenter Study

Author:

Shaaban A  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, University of Virginia Health, Charlottesville, Virginia, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:40536334]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2025 Jun
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

血管芽腫はWHOグレード1の良性腫瘍であり,摘出後の腫瘍コントロールは良好である.しかし,それらの中には脳幹や上位頚髄などの重要中枢に発生するものもあり,その摘出は必ずしも容易ではない.一方,ガンマナイフによるSRSの長期効果や合併症については充分に判っていない.本研究は世界17ヵ所のガンマナイフ施設で,1993年からの約30年間にSRSが実施された頭蓋内血管芽腫患者193名(VHL病104名,孤発性89名),腫瘍個数570個(VHLに伴うもの433個,孤発例137個, 部位別では脳幹45個,小脳482個,天幕上40個)を対象とした解析である.初回SRS後の追跡期間中央値は,VHL群52ヵ月,孤発群44ヵ月であった.

【結論】

最終追跡時点において,腫瘍制御(不変あるいは縮小)率は,VHL群で85%,孤発群で76%であった.放射線壊死はVHL群で13例(3.5%),孤発群で5例(3.8%)認められた.3年および5年の腫瘍進行累積発生率は対象全体で13%と22%,VHL群では14%と25%,孤発群では13%と17%であった.特に孤発群では嚢胞性腫瘍の方が実質性腫瘍よりも進行の頻度が高かった.全体として,VHL群の方が孤発群よりも全生存率および無増悪生存率が高かった.
SRS時の高齢,男性,複数腫瘍の存在は,対象例全体およびVHL群において局所腫瘍制御率の低下と相関していた.15 Gyを超える腫瘍辺縁線量は,局所腫瘍制御率と相関していた.

【評価】

本研究は,193例(570個)という過去最多の頭蓋内血管芽腫の集団を対象とした,ガンマナイフによるSRSの効果と安全性に関する後方視的解析である.そのうち76%はVHL症候群の患者に発生した血管芽腫であった.SRS施行の理由は,VHL群では新規腫瘍(58例[57%])で,孤発群では残存腫瘍(45例[51%])が最多であった.腫瘍体積はVHL群の方が有意に小さく中央値0.10 cc,孤発群では1.04 ccであった.腫瘍周辺線量の中央値は,VHL群で16.0 Gy,孤発群で15.0 Gyであった.その結果,中央値およそ4年間の追跡期間で,腫瘍制御率は約8割であった.かたや,3年および5年の腫瘍進行累積発生率は対象全体で13%と22%であった.
従来の報告をみると,Kanoらによる血管芽腫に対するSRSの国際多施設共同研究では,SRS後3年で92%,10年で79%の局所制御率が得られている(文献1).Panらによる26報・596例・1,535腫瘍を対象としたメタアナリシスでは,5年PFSは88.4%と報告されている(文献2).Carreteらの小脳血管芽腫123病変に対するSRS後の解析では5年PFSは82%であった(文献3).本稿のShaabanらの国際共同研究の結果も,これらの報告とほぼ同一の成績と考えて良い.
本研究では,のう胞性腫瘍では実質性腫瘍と比較してSRS後の進行のリスクが高いことが明らかになったが,従来の報告でも,のう胞性腫瘍ではSRSによる腫瘍制御が悪く,逆に充実性腫瘍,小型腫瘍,辺縁線量が高かった腫瘍では腫瘍制御率が高いことが示されている(文献1,2).
こうした事実は,血管芽腫に対するSRSは腫瘍が小型のうちに早期に実施すべきことを示唆している.また大きなのう胞を伴う腫瘍では,のう胞開放,のう胞内容吸引などの外科的処置後のSRSも考慮すべきであろう.
一方近年,血管芽腫に対する薬物療法も登場しつつある.VHL関連腫瘍では,VHL遺伝子機能の欠失により低酸素誘導因子(HIF)-2αが蓄積し,これがHIF-1βと転写複合体を形成し,腫瘍増殖と血管新生を促進させる(文献4,5).2021年に米国FDAにより承認されたベルズチファン(Belzutifan)はHIF-2αを標的とする初の経口剤であり,VHL関連腎細胞癌,中枢神経の血管芽腫,膵臓の神経内分泌腫瘍のうち,早急の手術を必要としないものが適応とされている(文献4).日本でもベルズチファン(ウェリレグ®,MSD製薬)はVHL関連腫瘍およびがん化学療法後に増悪した根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する適応で,2025年6月24日に製造販売承認を取得している.将来本邦でも,延髄や脊髄の症候性の血管芽腫のうちで早急の手術を必要としないものに対しては,まずベルズチファン投与が行われる時代が来るかも知れない(文献6).ベルズチファン投与に加えてのSRSの相乗効果については今後の研究課題である.

執筆者: 

有田和徳