転移性脳腫瘍に対する摘出度が生命予後に与える影響:ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の867例の解析

公開日:

2025年8月22日  

Impact of Extent of Resection on Survival in Brain Metastasis: An Analysis of 867 Patients

Author:

Hulsbergen AFC  et al.

Affiliation:

Computational Neuroscience Outcomes Center, Department of Neurosurgery, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston, Massachusetts, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:40548745]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2025 Jun
巻数:Online ahead of print.
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【背景】

転移性脳腫瘍の摘出度と生命予後との関係は明確ではない.ブリガム・アンド・ウィメンズ病院脳外科は,2004年からの14年間に摘出術が行われ,手術後3日以内に造影MRIが施行された転移性脳腫瘍867例を対象に,摘出度と全生存期間(OS)ならびに頭蓋内無増悪生存期間(IC-PFS)との関係を検討した.患者年齢中央値61歳,頭蓋内多発例は50.3%,腫瘍直径中央値3.0 cm,669例(77.1%)が天幕上腫瘍で,310例(35.8%)に頭蓋外転移を認めた.
345例(39.9%)では術後造影MRI上で残存病変を認めず全摘出と評価された.365例(42.1%)では摘出腔に対する定位手術的照射(SRS)が施行された.

【結論】

多変量解析では,亜全摘出は全摘出と比較して,IC-PFSの短縮(HR 1.32,p <.001),OSの短縮(HR 1.28,p =.005),髄膜播種の発生率上昇(OR 1.74,p =.02)と有意に相関していた.
また,亜全摘出+SRS群は,全摘出群と比較してIC-PFSの短縮と相関していた(HR 1.35,p =.04).
サブグループ解析では,3 cmを超える大型病変,テント上病変,ならびに頭蓋外病変を有さない症例において,腫瘍摘出度と予後との相関が最も強く認められた.一方で,摘出腔へのSRS施行の有無や転移巣の個数はこの相関にほとんど影響しなかった.

【評価】

従来,良性あるいは悪性のグリオーマに関しては,全摘出が良好なOSとPFSをもたらすことが周知されている(文献1,2).一方,転移性脳腫瘍に関しては,全摘出がOS,PFSを延長するとの報告もあるが(文献3,4),これを否定する報告もある(文献5-7).この差異の背景には対象集団毎の頭蓋内転移性病変の個数,術後照射の有無あるいは方法,頭蓋外病変の有無などの違いが大きかったことが推測される.2019年に発表された米国脳神経外科学会のガイドラインでは,RPA分類I群(65歳未満,頭蓋外転移なし,原発腫瘍が制御されている,KPS >70)においては全摘出が亜全摘出よりも推奨されているが,他の患者群に対する指針は明言されていない(文献8).
本研究は,摘出手術が行われた転移性脳腫瘍867例を対象とした解析であり,対象には頭蓋内多発例50.3%,腫瘍直径中央値3.0 cm(IQR:2.2-3.9),669例(77.1%)が天幕上病変,310例(35.8%)に頭蓋外転を有するという,実際の臨床現場で遭遇するような多彩な患者の集団である.全摘出は39.9%で達成され,術後SRSは42.1%,全脳照射は39.6%で施行されている.
多変量解析の結果,術後造影MRIでの残存腫瘍の存在は,OSや頭蓋内無増悪生存期間(IC-PFS)の短縮,および髄膜播種の頻度増加と有意に相関した.全摘出群と部分摘出+定位放射線治療群を比較しても,全摘出ではIC-PFSの延長,髄膜播種の減少と相関し,OSの延長と相関する傾向を示した.
そうだろうねという結果ではあるが,全摘出の頻度が約40%と低い点が気になるところである.著者らは,術後造影MRIでの微小病変や残存が少しでも疑われる例はすべて亜全摘出に入れていることが影響していると推測している.しかしそれにしても,手術中所見(術者の判断)での全摘出率90.8%とは大きく乖離している.「メタだからコロッと取れるよね」などという不遜な考えを廃して,ナビゲーション,術中蛍光観察,術中MRI,電気生理学的モニタリングなど持てるリソースを十分に活用して,(術者の判断に頼らない)真の全摘出を目指すべきであろう.また,腫瘍の全摘出の有無にかかわらず,予後にかかわる重要な因子である髄膜播種のリスクを低減させるためのネオアジュバントSRSの必要性は常に考慮されるべきであろう(文献9,10).

執筆者: 

有田和徳

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