非定型髄膜腫は見つかったらできるだけ早く手術すべき:米国NCDBの5,452例の解析から

公開日:

2025年8月23日  

Association of shorter time to surgery with improved overall survival for atypical intracranial meningiomas: an analysis using the National Cancer Database

Author:

Tang L  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Johns Hopkins School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:40117658]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2025 Mar
巻数:143(2)
開始ページ:375

【背景】

非定型髄膜腫(WHOグレード2)は,グレード1髄膜腫よりも速い増殖速度や脳浸潤を特徴とする(文献1,2).全摘手術は非定型髄膜腫患者の生存率を改善することが知られているが,手術のタイミングが予後に与える影響については明白ではない.本研究では診断から手術までの期間と生存率との関連を検討した.2004年から2019年までに米国国立がんデータベース(NCDB)に登録され,摘出手術を受けた成人の非定型髄膜腫患者5,452名(約70%が51-75歳)を対象とした.診断から手術までの平均期間は0.8ヵ月であり,63.3%が全摘術を受け,28.3%が術後放射線治療を受けた.術後の平均追跡期間は50.9ヵ月で,全体で21.4%が追跡期間中に死亡した.

【結論】

二変量解析では,診断から手術までの期間が1ヵ月延びるごとに死亡リスクが有意に増加した(HR 1.03,p =.01).多変量解析でも,期間の延長が死亡率の有意な予測因子であった(HR 1.03,p =.02).サブグループ解析では,部分摘出を受けた患者において手術の遅延が死亡率の上昇と相関していた(HR 1.04,p =.01)が,全摘術を受けた患者では相関はなかった(HR 1.02,p =.43).多変量解析では,女性,アジア人,教育/研究関連施設で治療を受けた患者,放射線療法を受けた患者では死亡率が有意に低下しており,男性,アフリカ系アメリカ人,腫瘍サイズが60 mmを超える患者,併存疾患が多い患者,部分切除を受けた患者では死亡率が有意に上昇していた.

【評価】

膠芽腫に関しては,日本の国立がん研究センターから,発症後2週間以内の診断,3週間以内の手術が長期生存と相関していることが報告されており(文献3),一般には準緊急手術が推奨されている.それでは,グレード1髄膜腫よりも速い増殖速度,脳浸潤能,再発率を示す非定型髄膜腫(文献1,2)における手術のタイミングはどうであるべきなのか.
本研究は,米国国立がんデータベース(NCDB)に登録された非定型髄膜腫の手術症例5,452名という巨大な患者集団を対象に,診断から手術までの期間が生命予後に与える影響を検討したものである.実際は診断から手術までの期間中央値は0.2ヵ月(IQR:0.03ヵ月,0.8ヵ月),平均値は0.81ヵ月であった.その結果,診断から手術までの期間が1ヵ月延びるごとに死亡リスクが3%増加することが示されている.この結果を受けて著者らは,患者の状態が許す限り,非定型髄膜腫に対しては早期の切除を推奨するとまとめている.ただし,全摘出が達成された例ではこの原則は当てはまらず,早期手術の生命予後に対する効果は認められなかったという.本研究対象全体の診断から手術までの期間の中央値の0.2ヵ月とはわずか6日間であるが,かくも素早く手術まで持ち込める米国での実情に,まず驚かざるを得ない.
もしかすると,NCDBに登録され,かつ解析対象となった因子についての記載が十分という研究対象選択の段階で,手術までの期間が長かった症例が意図せずに排除されているのかも知れない(Selection Bias)."
その他の人口統計学的な因子や臨床的な因子と非定型髄膜腫患者の生命予後との関係も多変量解析されている.これによれば,女性,アジア人(白人,アフリカ系アメリカ人,ヒスパニックと比較して),教育/研究関連施設で治療を受けた患者,放射線療法を受けた患者では死亡率が有意に低下していた.
問題は,早期の摘出が必要な非定型髄膜腫を受診後早期にどうやって区別するかということであるが,この点については本稿では触れられていない.
この問題に関しては,非定型髄膜腫を含むハイグレードの髄膜腫と相関する因子として,男性,腫瘍周囲浮腫,嚢胞,円蓋部,大きな腫瘍体積,壊死,腫瘍辺縁不整,T1強調像での信号強度,ADC値,造影パターンなどが報告されており,それらの因子を統合したハイグレード髄膜腫の術前予測のためのスコアリング・システムもいくつか報告されている(文献4-9).
脳外科医の役割は,こうした因子あるいはこれらを統合したスコアリングシステムを用いていち早く非定型髄膜腫を発見し,早急に摘出手術を行うこととなる.もう一つのオプションは,非定型髄膜腫の可能性を否定できないので,症候性の髄膜腫や大型の髄膜腫を見つけたら,遅滞なく手術に持ち込むことであるが,ハードルは高そうである.

執筆者: 

有田和徳

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