Vol.1, No.2, P.25 公開日:
2016年10月15日最終更新日:
2021年1月19日Outcomes of proton therapy for patients with functional pituitary adenomas.
Author:
Wattson DA et al.Affiliation:
Harvard Radiation Oncology Program, Boston, Massachusetts, USAジャーナル名: | Int J Radiat Oncol Biol Phys. |
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発行年月: | 2014 Nov |
巻数: | 90(3) |
開始ページ: | 532 |
【背景】
下垂体腺腫に対する陽子線治療は既に20年以上の歴史を有しているが,その安全性と効果に関するまとまった報告は少ない.ハーバード放射線オンコロジー・プログラムのWattson DAらは,自施設で1992~2012年の間に陽子線治療を行い,6カ月以上経過観察した165例の機能性下垂体腺腫の転帰を解析した.92%は1回照射(radiosurgery)で照射線量中央値は20Gy(RBE),残りは分割照射を行った.CRは薬物療法なしでの3カ月間の正常検査値と定義した.
【結論】
最終追跡時のCR率とCRまでの期間中央値はクッシング病(74例)で54%・32カ月,ネルソン症候群(8例)で63%・27カ月,先端巨大症(50例)で26%・62カ月,プロラクチノーマ(9例)で22%・60カ月であった.CRまでの期間はACTH産生腫瘍(クッシング病+ネルソン症候群)では他の疾患より短かった.43カ月間(中央値)の追跡期間中,画像上の腫瘍制御率は対象140例中98%であった.新たな下垂体機能障害の出現率は照射後3年,5年でそれぞれ45%と62%であった.照射ターゲット体積は下垂体機能低下症の有意の予測因子であった.
【評価】
内分泌学的寛解率は従来のガンマナイフとの差はなかったとの考察であったが,優れた下垂体外科医とガンマナイフサージョンの組み合わせではもう少し良いように思われる.本研究対象者のうち4例で遅発性の痙攣が生じたが,これは初期の頃にトルコ鞍全体を照射範囲としていたため、側頭葉内側に照射が加わったためとされている.しかし,本文中で示されている照射計画の図によれば,現在でも腺腫と下垂体を区別せずに照射が行われていることがうかがわれる.下垂体機能不全は3年間で45%と高率である.ガンマナイフに比較して下垂体への照射線量が高いことが原因かもしれない.
著者らの結論に関わらず,示された治療成績と下垂体機能低下症の出現率,さらには陽子線治療に関わるコストを考慮すれば,少なくとも本邦で陽子線治療がガンマナイフに代わる可能性は当面少ないのではないか.
執筆者:
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参考サマリー