レビュー:下垂体 TGFβ1系;薬剤抵抗性プロラクチノーマに対する新規ターゲット

Vol.1, No.2, P.8 公開日:

2016年9月10日  

最終更新日:

2021年1月19日

The pituitary TGFβ1 system as a novel target for the treatment of resistant prolactinomas.

Author:

Recouvreux MV  et al.

Affiliation:

Department of Medicine, Cedars Sinai Medical Center, Los Angeles, California 90048, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:26698564]

ジャーナル名:J Endocrinol.
発行年月:2016 Mar
巻数:228(3)
開始ページ:R73

【背景】

プロラクチノーマは下垂体腺腫の中で最多で,その多くはドパミン作動薬による治療に良く反応する.しかし,ある種のプロラクチノーマはドパミン抵抗性である.このようなドパミン抵抗性プロラクチノーマに対する新しい治療ターゲットが求められている.トランスフォーミング成長因子β1(Transforming growth factor b1, TGFβ1)はプロラクチン産生細胞の増殖とプロラクチン分泌の抑制因子であり,ドパミン抑制システムを部分的に調節している.

【結論】

プロラクチノーマでは動物モデルでもヒトでもTGFβ1活性が低下しており,同時に TGFβ1システムのいくつかのコンポーネントも発現が低下している.したがって,TGFβ1抑制システムの回復はドパミン抵抗性プロラクチノーマに対するドパミン制御を迂回する新たな治療方法となり得る.

【評価】

TGFはα,β,γの3つのアイソフォームを有し,同じ受容体を通じて細胞増殖,成長,分化,運動能を調節するサイトカインである.TGFβ1は細胞増殖・分化を制御し,細胞死を促す.プロラクチノーマではTGFβ1活性が低下していることが知られている.Thrombospondin 1(TSP-1)は抗血管新生作用と共にTGFβ1の活性化作用を有する糖蛋白質である. Recouvreux MVらは,このTSP-1類似体のABT-510とABT-898がE2誘発プロラクチノーマモデル(ラット)における腫瘍増殖と血清中プロラクチン値上昇を抑制することを2012年に報告している(文献1).

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー