異型下垂体腺腫の病理診断基準の修正:ドイツ下垂体レジストリーに基づく検討

Vol.1, No.3, P.2 公開日:

2016年11月12日  

最終更新日:

2021年1月7日

Histological criteria for atypical pituitary adenomas - data from the German pituitary adenoma registry suggests modifications.

Author:

Miermeister CP  et al.

Affiliation:

Departments of Neuropathology, Friedrich-Alexander University Erlangen-Nürnberg (FAU), Erlangen, Germany.

⇒ PubMedで読む[PMID:26285571]

ジャーナル名:Acta Neuropathol Commun.
発行年月:2015 Aug
巻数:3
開始ページ:50

【背景】

WHO-END(第3版)の下垂体腺腫の病理分類では,非定型下垂体腺腫(atypical adenoma, APA)の診断におけるp53の陽性率や細胞分裂数は具体的には定義されていない.これらの事項を明らかにするために,ドイツErlangen大学のBusleiらは,ドイツ下垂体レジストリーから98例の非定型腺腫,10例の下垂体癌を抽出し,4000例の定型下垂体腺腫(typical pituitary adenoma, TPA)から200例のマッチド・コントロールを作成し,ROC解析を用いて検討した.

【結論】

APA診断のための有意な閾値はp53(≥2 %;UC: 0.94),細胞分裂数 (≥2核分裂像[10高倍率視野]; AUC: 0.89),Ki-67(≥ 4 %,AUC:0.98)で、Ki-67≥ 4 %が最も信頼性の高い閾値であった.ロジスティック回帰分析ではp53,細胞分裂数,Ki-67,腫瘍の硬膜浸潤の4因子がAPAを診断する有意の因子であった.核小体の存在はTPAを診断する有用な因子であった.

【評価】

本研究はドイツ下垂体レジストリー(2005〜2012年)に登録された4,232例の下垂体腺腫(定型下垂体腺腫96.9%,非定型下垂体腺腫2.9%,下垂体癌0.2%)を対象としている.
本研究の結果が次期の内分泌腫瘍WHO診断基準(2017年発行予定)に反映されるのか,注目したいところである.一方,次期WHO基準ではatypical adenomaの用語がaggressive adenomaに代わることも予想されており,今後1年間の下垂体腺腫の病理診断基準の動きに注目したい.
この研究に対する唯一の疑問はAPAの診断そのものが正しいのかどうかであるが,これについては長く下垂体病理に携わってきた2人の著名な病理医(Wolfgang SaegerとRolf Buslei)が別個に診断したとしか書かれていない.APAの定義そのものが曖昧な中では,その病理学的診断の正確性は,その患者集団の予後によって決定されるしかない.長期追跡の結果が待たれる.

執筆者: 

有田和徳

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