編者 有田和徳(鹿児島大学名誉教授)
A4判 370ページ
定価5,300円(税込・送料別)
*「電子書籍」定価5,300円(税込)
本書『間脳・下垂体レビュー2021』は、2016年から2020年7月までに公開された間脳・下垂体疾患関係の英文論文のなかから、特に重要と思われる244本を編者がピックアップし、30秒で読めるようコンパクトに解説したものです。
それぞれの論文のSummaryは、直訳ではなく、執筆・監修者が、論文をどのように読み、臨床的な意義を求めたかというオピニオンをまとめ、読者自身に当該論文を手にとって読んでいただくためのガイドとして編集しました。
『間脳・下垂体レビュー 2021』 発刊に寄せて
有田和徳先生は、‘間脳・下垂体’を熱く論じてきた旧友である。
1970年代から80年代は、間脳下垂体ホルモンが次々と開発されるとともにCTスキャンやMRIが登場し、間脳・下垂体の臨床が大きく花開いた時期である。この頃、国内外の学会や研究会など実に多くの場面で有田先生と議論を重ねてきた。当時から、私は有田先生の臨床データに絶大な信頼を寄せていた。一般に、外科医は少しでも自分の治療成績をよく見せたがる嫌いがあるが、有田先生は実に誠実にデータに基づく議論をされてきた。これは、同じ専門性を有する者から見れば明確に分かることである。
その流れのなかで、先生が主宰された学会に関して、それらの初回からご自分の学会までのすべての発表演題の抽出と分析をして報告をされた。私が承知しているだけでも、「日本間脳下垂体腫瘍学会」や「日本脳神経CI学会」が挙げられる。先生が纏め上げられた結果は、それらの学会や学問の歴史を振り返るうえできわめて貴重な資料である。誰かが汗をかかなければならないことを率先して実行されたわけである。
有田先生はデータの人である。以前から、脳神経外科のさまざまな分野の英文論文を渉猟し、注目される論文を抽出し、抄訳にコメントを加えるという仕事をしてこられた。パソコンのなかった昔、自分たちで文献カードを作ったことを思い出すが、その拡大発展版である。
今回、間脳・下垂体の分野に関する4年余りの英文文献の中で重要と思われる244本を抽出し、各分野のエキスパートと共にこれまで同様のお仕事をされた。これは間脳・下垂体の臨床家や研究者にとってきわめて有用であると思われる。このような事業の価値は誰しもわかっているが、やはり誰かが汗をかかなければ実現しない。
有田先生の一連のお仕事を見てきて、昔読んだ『聊齋志異』を思い出した。この歴史的に著名な短編小説集は、清時代の蒲松齢(1640~1715)が、当時世間に口伝されていた怪綺談などを精力的に収集して整理し、およそ500篇の作品に纏めあげたものである。これらは地道な仕事ではあるが、誰かが発想し実直にまとめ上げると、多くの人の役に立ち、後世にも記録として残る。
本書はそのような流れをくむ意義深い成書である。
日本医科大学 名誉教授
湘南医療大学 副学長
寺本 明
『間脳・下垂体レビュー 2021』 推薦のことば
このたび有田和徳先生編集の『間脳・下垂体レビュー 2021』が刊行されました。
間脳・下垂体疾患は、有田和徳先生のライフワークです。広島大学時代から間脳・下垂体疾患に取り組まれ、2005~2018年までの鹿児島大学脳神経外科在任中も間脳下垂体疾患を中心に多大な業績を残されました。2013年からは2年間、「日本間脳下垂体腫瘍学会」の理事長を務められています。また、鹿児島大学教授在任中に、下垂体、脳神経外科領域のホットな論文を日本語で紹介するWebサイト(「Silex医の知の共有」)を立ち上げ、現在も活動を続けておられます。このサイトではこの領域の我が国の第一人者たちが執筆者やコメンテーターとなり、独自の論文を選択して報告することで「知の共有」をめざしています。教授退官後もそのペースは落ちるどころが、ますますその活動をパワーアップさせています。
今回はそのなかから間脳・下垂体領域に限定し、2016~2020年の間に発表された244編の論文紹介をまとめたものになります。この論文紹介の特徴は単なる論文の紹介にとどまらず、必ずその論文に対する「評価」の項目があり、執筆者のコメントが追加されています。すべての論文評価には有田先生ご自身で執筆または監訳者として担当されていますので、有田イズムが随所に散りばめられています。「序」の言葉にありますように、有田先生の間脳・下垂体疾患への熱意とこれまでの患者さんへの思いを感じとっていただきたいと思います。
間脳・下垂体疾患領域でも、基礎的、臨床的な新たな知見が毎日のように報告されています。この4年間に発表された間脳・下垂体疾患に関する主要な論文は本書に網羅されていると思いますので、ぜひ手にとってもらいたいと思います。通常臨床の疑問に答える論文も多く掲載されていますので、エキスパートにも役立つ情報が盛り込まれています。
今回この膨大なレビューを編集して刊行するのは多大な労力を要したとは思いますが、私が会長を務める「第41回日本脳神経外科コングレス総会」前には刊行したいとの強い思いで実現したものと思います。改めて敬意を表すと同時に、今後の続編も楽しみにしています。
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 脳神経外科教授
第41回日本脳神経外科コングレス総会 会長
吉本 幸司