スイス・チューリッヒ州における膠芽腫の再検討:2005〜2009年と1980〜1994年の比較

公開日:

2016年9月26日  

最終更新日:

2017年6月9日

Glioblastoma in the Canton of Zurich, Switzerland revisited: 2005 to 2009.

Author:

Gramatzki D  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, University Hospital Zurich, Zurich, Switzerland

⇒ PubMedで読む[PMID:27088883]

ジャーナル名:Cancer.
発行年月:2016 Jul
巻数:122(14)
開始ページ:2206

【背景】

神経膠芽腫(glioblastoma, GBM)に対する現在の標準的治療プロトコールであるテモゾロミド(TMZ)+放射線(RT)→TMZ(維持)がスイスで導入されたのは2005年である.本研究の目的は2005〜2009年にスイス・チューリッヒ州でGBMと診断された患者群(n=264)における疫学データを1980〜1994年の患者群(n=715)のそれと比較することによって,TMZ/RT→TMZ導入による診断,治療,転帰の変化を求めようとするものである.

【結論】

2005〜2009年群の全生存率(OS)は1年:46.4%,2年:22.5%,3年:14.4%であり,1980〜1994年群の1年:17.7%,2年:3.3%,3年:1.2%に比べ大幅に改善した.また,OSの中央値も2005〜2009年群:11.5カ月,1980〜1994年群:4.9カ月であった.2005〜2009年群の治療法別にみたOSの中央値は,緩和維持療法で1.9カ月,放射線治療単独で6.2カ月,TMZ単独で6.7カ月,TMZ/RT→TMZの標準治療で17.0カ月であった.多変量解析によれば,IDH1に変異のないGBM患者において,その予後と関連があるのは,年齢,KPS,腫瘍摘出の程度,第1選択治療の種類,診断された年,MGMTプロモーターのメチル化の状態であることがわかった.

【評価】

神経膠芽腫(GBM)に対する人口ベースでの疫学データは少ない.スイス・チューリッヒ州においては1980〜1994年の間,GBMに対する疫学研究が行われた(n=715).この時代のGBM患者の生命予後はきわめて不良で,平均生存期間は4.9カ月,3年生存率は1.2%に過ぎなかった.一方,2005年以降,新規のGBMではOSの著明な改善が認められた.
TMZ+放射線という現在の標準治療が奏功している証拠が,この住民ベースの疫学研究でも得られたことになる.ちなみに,発生率は前期(1980〜1994年)3.7/10万人/年,後期(2005〜2009年)3.9/10万人/年,診断時年齢は前期61.3歳,59.5歳で変化はなかった.本邦では人口の急速な高齢化とともに診断時年齢が上昇してきているという報告が多い.

執筆者: 

原裕明   

監修者: 

有田和徳

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