拍動性耳鳴に対するS状静脈洞再形成術は有用か

Vol.1, No.3, P.4 公開日:

2016年11月20日  

最終更新日:

2021年1月21日

Transmastoid reshaping of the sigmoid sinus: preliminary study of a novel surgical method to quiet pulsatile tinnitus of an unrecognized vascular origin.

Author:

Jae-Jin Song  et al.

Affiliation:

Department of Otorhinolaryngology-Head and Neck Surgery, Seoul National University Bundang Hospital, Korea

⇒ PubMedで読む[PMID:26745481]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2016 Aug
巻数:125(2)
開始ページ:441

【背景】

S状静脈洞周囲の骨壁離開・菲薄化(DSSD/T)は血管拍動性耳鳴(VPT)の原因の1つと考えられる.ソウル大学のSongらは2010年2月からの5年間に経乳様突起S状静脈洞再形成手術が施行されたDSSD/Tを有するVPT患者8名を対象に数量評価法(NRS)を用いて,この手術法を評価した.

【結論】

8名中7名(87.5%)で,再形成手術後直ちにVPTは減弱した.NRSでは耳鳴りと苦悩(distress)の訴えに有意な改善を認めた(p=0.007, p=0.008).術前に患側で聴力低下を示していた3名の患者は,術後に改善を認めた.術後に頭蓋内圧が上昇した1例については減圧術後に正常化した.その他,手術による有害事象はみられなかった.

【評価】

経乳様突起S状静脈洞再形成術はVPT患者に対し一定の効果があることを示唆している.
手術の手順は①経乳突蜂巣的に横静脈洞-S状静脈洞移行部を露出し,②静脈洞の突出部を骨屑(乳突蜂巣切除に際して得られる)で外側から圧迫し静脈血流を整流し雑音の発生を抑える,③その上から骨セメントで厚めにカバーし,雑音の中耳への伝搬を抑さえる.最初のステップの乳突蜂巣の除去も雑音の中耳への伝搬を抑制する.
症例数の少なさや,フォローアップ期間の短さが問題点である.またNRSでは術前後の変化を客観的に評価できず,手術自体によるプラセボ効果も否定できない.静脈洞の突出部(diverticulum)で真にturbulent flowが生じているのか,さらには雑音源となっているのか客観的評価が必要である.今後,客観的指標を用い,保存的治療群とのRCTが行われるべきである.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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