low grade gliomaに対する超全摘手術

Vol.1, No.3, P.11 公開日:

2016年12月28日  

最終更新日:

2021年1月26日

Long-term outcomes after supratotal resection of diffuse low-grade gliomas: a consecutive series with 11-year follow-up.

Author:

Duffau H  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Montpellier University Medical Center, Montpellier, France

⇒ PubMedで読む[PMID:26530708]

ジャーナル名:Acta Neurochir (Wien).
発行年月:2016 Jan
巻数:158(1)
開始ページ:51

【背景】

Low grade glioma (LGG)は長期の経過の中で,ほぼ全例が悪性化する.一方,LGGに対する全摘あるいは亜全摘は生存率を高めることはよく知られているところである.さらに,MRIで示される腫瘍境界を越え更に大きく摘出すれば(supratotal resection:超全摘),腫瘍の悪性化を防ぐ可能性がある.フランスのDuffauは,このような超全摘手術を行った連続16例の長期的転帰を報告している.初発症状は15例がけいれん,1例は偶発腫瘍.

【結論】

全例で,切除範囲はFLAIR法MRIで示される腫瘍境界を越えていた.手術後3ヵ月目では,全例が普通の生活を送ることが出来た.手術後の補助療法は一例も実施されなかった.97〜198ヵ月(平均132ヵ月)の追跡期間で,8例は再発無く,8例は再発した(平均70.3ヵ月後)が,悪性転化は認められなかった.再発例のうち5例に追加治療が行われた.内訳は再手術(2例),放射線(2例),化学療法(3例).最終追跡時,16例全例が生存し,普通の生活(KPS90か100)を送っている.

【評価】

Gliomaのinvasion frontはFLAIR法MRIで示される範囲を超えて進んでおり,この部分も含めて摘出することが出来れば,再発や悪性化を防ぐことが出来るであろうという発想は素朴でわかりやすい.このような手術はsupratotal surgery,あるいはsupraradical surgeryとも呼ぶことが出来る.本文によれば実際の手術は,全例,ナビゲーション下かつ皮質・皮質下電気生理学的モニタリング下で実施し,15例は覚醒下手術であった.手術後に9例で新たな神経症状が出現した.このうち2例は補足運動野症状で,9例は言語障害であったとのことで,「ぎりぎりまで攻めた」手術ということになる.幸い,9例とも症状は3ヶ月以内に消失したとのことである.
このスタディーに対する最大の疑問は,silent areaの摘出であれば高次脳機能やメンタル機能に全く問題ないのかという点である.詳細な高次脳機能テスト,心理テストの結果が示されるべきである.また当然,通常の全摘出群を対照とした前向きのコントロールスタディーが組まれることを期待したい.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー