Vol.1, No.3, P.12 公開日:
2016年12月28日最終更新日:
2021年1月26日Delaying standard combined chemoradiotherapy after surgical resection does not impact survival in newly diagnosed glioblastoma patients.
Author:
G. Louvel et al.Affiliation:
Département de Radiothérapie, Gustave Roussy 114, Rue Edouard Vaillant, Villejuif Cedex, France.ジャーナル名: | Radiother Oncol. |
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発行年月: | 2016 Jan |
巻数: | 118(1) |
開始ページ: | 9 |
【背景】
フランスのneuro-oncologyクラブは手術から術後の標準的補助療法までの期間が予後に影響するかどうかを明らかにするために,後方視的な多施設共同研究を行った(n=692).
【結論】
手術からの放射線化学療法開始までの期間は0.1〜9.0ヵ月で,中央値1.5ヵ月 (IQR:1.0ヵ月~2.2ヵ月)であった.全症例のOS中央値は10.3ヵ月で,単変量あるいは多変量解析ではOSあるいはPFSは手術から放射線化学療法開始までの期間に影響されなかった.
【評価】
神経膠芽腫手術後の放射線化学療法開始までの期間が生命予後に影響するか否かについては諸説がある.腫瘍細胞の生物学的な活性を考慮すれば早期治療開始の利益が予想され,このため,いくつかのRCTでは放射線化学療法開始までの期間を6週間以内と定めている.逆に,超早期に放射線化学療法を開始する不利益としては①手術後の脳組織の低酸素環境が放射線の効果を妨げる,②摘出腔の十分な縮小が得られない段階での照射範囲の設定は不正確,③早期放射線照射による術後障害の悪化の可能性が考えられている.
本研究では放射線化学療法開始までの期間<1.0ヵ月,1.0〜1.5ヵ月,1.5〜2.2 ヵ月,>2.2 ヵ月の4群間でPFS, OSに差はなかった.臨床現場の実感としては,術後2〜3週間で残存腫瘍が急速に大ききなるケースはどうするんだという疑問は残る.だからこそ,著者らの結論は,“広範囲な腫瘍切除後” 6週間以内であれば,(リハビリテーションなどによる)回復期間を犠牲にしてまで,早期治療開始にこだわる必要はないと,かなり慎重な表現となっている.
ちなみに,本研究対象症例では,放射線化学療法開始までの期間はカルムスチン・ウェファー留置群で有意に長かった.カルムスチン・ウェファーによる脳浮腫や痙攣などが影響しているのかも知れない.逆にRTOG-RPAクラス 5,6群,神経脱落症状群,術後痙攣群で有意に短く,重症患者に対して一刻も早く補助療法を開始したいという臨床現場の意思を反映しているのかも知れない.一方,有意にOS延長をもたらす因子は,多変量解析で女性,全摘/亜全摘, RTOG-RPAクラス3,4であった.
執筆者:
有田和徳関連文献
参考サマリー