小児てんかん切除外科後10年以上経過観察した患者のてんかんコントロールと社会適応

Vol.2, No.2, P.10 公開日:

2017年4月8日  

最終更新日:

2021年2月1日

Long-term outcomes of epilepsy surgery in 85 pediatric patients followed up for over 10 years: a retrospective survey.

Author:

Hosoyama H.  et al.

Affiliation:

National Epilepsy Center, Shizuoka Institute of Epilepsy and Neurological Disorders, Shizuoka, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:28291425]

ジャーナル名:J Neurosurg Pediatr.
発行年月:2017 May
巻数:19(5)
開始ページ:606

【背景】

薬剤抵抗性小児てんかん切除外科の社会適応を含む術後長期予後に関する報告は少ない.本稿は静岡てんかん・神経医療センターで術後10年以上経過観察し,質問票に回答を得た手術時年齢15歳以下85症例の報告である.

【結論】

直近2年以上発作が抑制されているEngel Class Iは76.5%であった.44.6%が抗てんかん薬を中止され,44.6%がフルタイムの職を得,無職はわずか4名であった.79.5%が手術結果に大変満足していると返答した.

【評価】

薬剤抵抗性小児てんかん患者の切除外科術後10年以上経過後の発作コントロールと社会参加の状況を調査した研究である.術後平均15.4年後でも,Engel Class Ⅰが3/4を占め,45%がフルタイムワーカーという良好な発作コントロールを社会参加率で示した.さすがナショナルセンターという成績である.社会適応の程度や手術に対する満足度は良好な発作転帰と関連していた.予後不良因子として,多脳葉性,日に10回以上の発作頻度,発症年齢が2歳以下,脳炎後あるいは広範萎縮病変などが得られた. 意外なことに5歳を境とした手術時年齢と発作転帰に相関はなく,発症から手術までの5年を境とした期間で短い方が予後は良かったが有意差は得られなかった.しかし,文献上ではより早い手術時年齢,短い発作期間の方が予後良好との報告は多く,今回報告された良好な手術転帰も考慮すれば,薬剤抵抗性小児てんかん症例に対しては可能な限り早期の外科治療を目指すべきと思われる.

執筆者: 

大坪俊昭   

監修者: 

有田和徳

参考サマリー