脳底動脈閉塞症に対しても機械的血栓除去術は有効:デバイスはADAPTかステントリトリーバーか

公開日:

2018年5月14日  

最終更新日:

2018年5月15日

Mechanical thrombectomy in basilar artery occlusion: influence of reperfusion on clinical outcome and impact of the first-line strategy (ADAPT vs stent retriever).

Author:

Gory B  et al.

Affiliation:

Department of Diagnostic and Interventional Neuroradiology, INSERM U947, University Hospital of Nancy, University of Lorraine, Nancy, France

⇒ PubMedで読む[PMID:29327997]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2018 Jan
巻数: [Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

近年,脳血管内治療デバイスは目覚ましい進歩を遂げており,機械的血栓除去術の有効性を証明した国際的な大規模臨床試験も既に数多く存在している(2018年5月時点で6つ).しかし,その検証の範囲は前方循環系における脳塞栓症に留まっており,後方循環系で生じた脳塞栓症に対して機械的血栓除去術がどこまで有効かは定かでない.本研究は,フランスの3つのストロークセンターで行った脳底動脈閉塞症に対する機械的血栓除去術を受けた症例を対象に機械的血栓除去術の有効性の評価を行うと共に,吸引式(ADAPT)およびステントリトリーバーという2つの手技の優劣も同時に検証したものである.対象は最終健常確認時刻から24時間以内に治療が完遂された脳底動脈閉塞症に対する機械的血栓除去術を受けた100症例.

【結論】

mTICI≧2bを達成した症例は79.0%,術後90日目のmRS 0~2を達成した症例は36.8%,術後90日目の死亡率は44.2%であった.mTICI≧2bは術後90日目のmRS 0~2の強い関連因子であった(非調整オッズ比:4.57,p=0.023).治療安全性(24時間以内の治療関連合併症,頭蓋内出血)に関してはADAPT群とステントリトリーバー群の間に有意差は無かった.ADAPTはステントリトリーバーと比べ,mTICI 3達成率が高く(非調整オッズ比:2.59,p=0.021),治療中に新たな脳塞栓症を発生させる率は低かった(4.3% vs 25.9%,p=0.003).ADAPTは脳底動脈閉塞症に対する第一治療戦略として有用である事が示唆された.

【評価】

脳底動脈閉塞症に対する機械的血栓除去術に関する他の臨床研究(参考文献1)やメタアナリシス(参考文献2)でも,同様の良好な再開通(mTICI≧2b)率が得られており,本研究の結果をサポートするものとなっている.脳底動脈塞栓症に対してADAPT/ステントリトリーバーのどちらが有効か,これまでに2つの小規模な臨床研究が報告されているが,本研究と同様に,ADAPTの方が再開通率が高かった(参考文献3,4).一方,いずれの研究もADAPTの方が治療後のmRSをより改善させるという結果は示せなかった.前方循環系と比べると,後方循環系では良好な再開通と良好なアウトカム(mRS 0~2)の関連性が薄いとの報告もあり,登録症例数が100例と少なかったことも相まって,有意差が得られなかった可能性がある.
本研究では,治療合併症のうち新規脳塞栓症に関しては,ステントリトリーバー群の方が,発生頻度が有意に高かった.左右それぞれの椎骨動脈が脳底動脈に順行性血流を送るため,後方循環においては完全なproximal protectionを構築することは難しい.この解剖学的特性が,単純に血栓を掻き出すだけのステントリトリーバーには不利に働いたのかもしれない.

執筆者: 

大庭秀雄   

監修者: 

有田和徳

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