M3(中大脳動脈)にも血栓回収療法

公開日:

2018年9月12日  

最終更新日:

2018年9月20日

Beyond Large Vessel Occlusion Strokes: Distal Occlusion Thrombectomy.

Author:

Jonathan A. Grossberg  et al.

Affiliation:

The Emory University School of Medicine / Marcus Stroke and Neuroscience Center, Departments of Neurology and Neurosurgery, Grady Memorial Hospital, Atlanta, GA.

⇒ PubMedで読む[PMID:29915125]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2018 Jul
巻数:49(7)
開始ページ:1662

【背景】

脳梗塞において,主幹脳動脈閉塞(LVOS)に対する血管内治療(ET,血栓除去)は標準治療となったが,遠位部閉塞については確立したエビデンスはない.本稿は脳梗塞に対する血管内治療データベース(2010〜2015,n=949)のうち,ETを施行された遠位部(ACA,PCA,MCAのM3)閉塞症例(n=69)を対象に,その転帰を検証した後ろ向き研究である.平均年齢;66.7±15.8歳,男性;57%.NIHSS中央値;18(13〜23).うちt-PA施行;36例(52%).

【結論】

治療法はステントリトリーバー37例(54%),血栓吸引療法31例(45%)であった.良好な再開通(mTICI;2b-3)は前者が34例(92%),後者が23例(74%)で,全体では57例(83%)であった.梗塞内血腫(PH)は全体で5例(7%)に発生した.ET施行領域で発症したPHは3例(4%)であり,うち2例はt-PA施行後であった.90日後の転帰は,21例(30%)がmRS 0~2で,14例(19.4%)は死亡したが,その頻度は中枢側MCAの血栓除去症例と同様(p=1)であった.

【評価】

遠位脳血管閉塞症例に対するET(血栓除去)の有益性・安全性に関する報告である.本研究でETが施行された遠位病変は,原発性が45例,LVOS閉塞再開通後の遠位部塞栓病変が23例,両者合併が1例であった.近年は新規デバイスの登場により,遠位病変に対しET施行された症例も散見されるようになったが,ETに関する大規模試験のほとんどは遠位部閉塞症例を除外している(文献1,2).本研究の対象症例は多発脳梗塞が多いことや,選択バイアス(遠位病変でも症状が軽度の場合は保存的加療である場合が多い)により,一般的な遠位血管閉塞症例よりも初療時のNIHSSが悪いことが推測される.また,複数領域を跨ぐ血管閉塞(ACA+MCAなど)は側副路の途絶もあり重症になりやすい点も考慮せねばならない.本コホートはLVOS再開通後のrescue thrombectomyを多く含んでいる点にも注意したい.ICA/MCAに対するETに関連したACA閉塞は4〜11%とされるが,近年DAWN試験やDEFUSE3試験などによりET適用症例は拡大し,rescue thrombectomyの必要性は増すことが予想される.遠位部脳血管は小径で血管壁が薄く,湾曲が強いという解剖学的問題点や,栄養領域が微小なため再開通後の症状改善が期待できない可能性があり,治療の可否や適応については慎重な検討が必要である.本研究のPH発症率は7%と,既報の2〜8%に比して出血リスク増加は認めなかったが,安全性・有効性については無作為前向き試験での更なる検証が待たれる.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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