グリオーマ悪性度分類はMRIテクスチャ解析のみで可能:脳腫瘍画像診断界の「アルファー碁」か

公開日:

2018年9月12日  

最終更新日:

2018年9月20日

Diagnostic accuracy of MRI texture analysis for grading gliomas.

Author:

Austin Ditmer  et al.

Affiliation:

University of Cincinnati Medical Center, 234 Goodman Street, Cincinnati, OH 45267, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:30145731]

ジャーナル名:J Neurooncol.
発行年月:2018 Aug
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

テクスチャ解析(TA)とはヒトに視認不可能なレベルの画像パターンを評価する手法であり,近年は腫瘍の不均一性に注目し臨床応用する試みがなされている.本稿は病理診断され,治療前に3T MRI撮影をされた,腫瘍サイズ>1cmのグリオーマ患者94症例を対象に,TAを用いたグリオーマ悪性度分類の精度を検証した後ろ向き研究である.解析にはTexRADソフトウェアを用い,画像特徴量の抽出範囲は半径0〜6mmの空間スケール因子(SSF)で規定した.

【結論】

低悪性度(WHO grade Ⅰ〜Ⅱ;LGG)が14例,高悪性度(WHO grade Ⅲ〜Ⅳ;HGG)が80例であった.
LGG,HGG間では,平均濃度,標準偏差(SD),陽性ピクセル数の平均値(MPP),エントロピー,尖度に有意差があった.またこれはSSF値2mmかつ造影後T1強調画像使用時に最も高精度であり,感度93%,特異度86%(AUC 0.90)であった.

【評価】

“radiomics”はCTやMRIなどの画像情報を解析・機械学習し,臨床上有益な情報を獲得する放射線診断学の新興分野である.TAはradiomicsの一つであり,腫瘍の不均一性と臨床情報(病巣の分類,治療反応性,予後,進行度など)との相関については複数の報告がある.腫瘍の不均一性は悪性度を規定する重要な要素であり,予後不良と相関することが知られている.腫瘍内の不均一性が増すほどタンパク質機能は多様性,適応性を獲得し,腫瘍生存に有利であるのみならず治療非奏功のリスクも増大する(文献1).2016年にはSkogenらがグリオーマの不均一性に注目し,HGG/LGG判別への有用性を報告している(文献2)が,本研究はさらに画像解析上の評価項目を検証し,診断精度を提示した点で重要である.本研究は後ろ向き試験である点,WHO脳腫瘍分類(2016)に則した分子マーカーについて未検討であり,今後の課題である.最近はradiomicsを用いて腫瘍浸潤CD8細胞の存在を予測する研究の報告(文献3)もあり,腫瘍学分野において本手法は悪性度分類のみならず,治療反応性や予後予測といった方向への発展・応用が期待される.経験豊かな脳外科医や神経放射線科医との対決も楽しみであるが,少なくとも数年以内に「対アルファー碁」と同じ結果になるように思う.これからの神経放射線科医には診断だけではなく,より臨床に深くコミットして,現場で診療指針を示すパイロット(水先案内人)の役割が問われているのかもしれない.一方で,過去30年間,知識,経験,友人たちとのディスカッションに基づいてMRI画像を読み解くという楽しみを味わってきた本記事の監修者としては,ある種の「寂寥」は禁じえない.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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