世界のクモ膜下出血の発生率は減少しているが,なぜか日本だけが上昇:75文献のメタ解析から

公開日:

2019年4月15日  

最終更新日:

2019年4月16日

Worldwide Incidence of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage According to Region, Time Period, Blood Pressure, and Smoking Prevalence in the Population: A Systematic Review and Meta-analysis.

Author:

Etminan N  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Mannheim University Hospital, Medical Faculty Mannheim, Heidelberg University, Mannheim, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:30659573]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2019 Jan
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

くも膜下出血(SAH)は依然として死亡率が高く,重篤な後遺症をきたす疾患である.時代の経過とともに血圧管理や禁煙の促進など一次予防は世界的に普及してきているが,その影響は明らかではない.この効果を証明すべく1960年から2017年までに公表されたくも膜下出血に関する文献を体系的なレビューならびにメタ解析を行った.血圧や喫煙率に関してはNoncommunicable Disease Risk FactorとGlobal Burden of Diseaseから抽出した.検索した文献のうち75の文献がメタ解析の対象となり,35ヶ国が含まれていた.

【結論】

全期間で,SAH発生率は7.9/10万人年であった.SAH発生の相対危険度は,女性は男性の1.3倍であった.45~54歳の男性と比較すると75歳以上の日本人女性は2.5倍であった.全地域での発生率は1980年から2010年にかけて10.2/10万人年から6.1/10万人年に低下し,1955年から2014年にかけて年1.7%低下した.地域別では,1980年から2010年にかけてくもSAH発生率は欧州では40.6%,日本を除くアジアでは46.2%,北アメリカでは14.0%の低下したが,日本では59.1%上昇した.収縮期血圧1mmHgの低下で7.1%,喫煙率1%の低下で2.4%のSAH発生率低下が得られた.

【評価】

本研究は世界のくも膜下出血(SAH)発生率と血圧,喫煙率の関係に関する初めてメタ解析である.これによれば,くも膜下出血の発生率は,全体では19880年から2010年にかけておよそ40%の低下が得られている.発生率低下の要因としては高血圧症の是正や喫煙率の低下が挙げられた.
発生率の低下の他の要因として未破裂脳動脈瘤の治療も考えられるが,くも膜下出血の発生率を10%低下させるためには全世界で1500万個の未破裂脳動脈瘤を治療する必要があり,米国における未破裂脳動脈瘤手術が10年間で12000例に過ぎないこと考慮すれば,発症率低下の大きな要因とはならない.
本研究で興味深いのは,以前からくも膜下出血の発生率が高いとされているフィンランドと日本の違いである.フィンランドからの報告は,1990年では16.6/10万人年とされていた発生率が,最近行われたFinnish studyでは,欧州の他国と比べると依然発生率は高いものの,喫煙率の低下に伴い2010年における発生率は9.1/10万人年まで低下していると報告されている(文献1).一方で,日本では,喫煙率は他国と比べて高いものの(26.1% vs. 19.3%),時代の経過とともに喫煙率の低下を認めている.しかし,くも膜下出血の発生率は上昇しており(1980年:17.6/10万人年,2010年:28.0/10万人年),特に高齢女性で発生率の上昇が大きいと解析されている.
本論文で取り上げられた,日本からの報告をよく見ると,CT以前の報告も含まれている(文献2).また,対象の地域も様々で,単純比較は困難なように思われる.唯一,Inagawaらが,同じ出雲地域での1980~1989年と1990~1998年を比較したデータを提供しているが,それによればくも膜下出血発生率は25/10万人年と23/10万人年であり,両期間で差はなかった(文献3).
本当に日本において,特に高齢女性において,くも膜下出血発生率が上昇しているのか,また,そうであれば,その理由は何か,日本発の解析に期待したい.

執筆者: 

松田真伍   

監修者: 

Tetsuji Inagawa、井川房夫

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