脳梗塞t-PA静注は発症9時間以内へ:EXTEND試験

公開日:

2019年5月12日  

最終更新日:

2019年5月15日

Thrombolysis Guided by Perfusion Imaging up to 9 Hours after Onset of Stroke.

Author:

Ma H  et al.

Affiliation:

Florey Institute of Neuroscience and Mental Health, the Department of Medicine and Neurology, Melbourne Brain Centre at the Royal Melbourne Hospital, Australia

⇒ PubMedで読む[PMID:31067369]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2019 May
巻数:380(19)
開始ページ:1795

【背景】

CT/MR灌流画像(CTP/MRP)は脳循環組織血流の定量化に優れており,急性期脳梗塞に対する再灌流療法の適応症例選択への応用が期待されている.本研究は,オーストラリアや台湾など4ヵ国で実施された最終未発症確認時から4.5~9.0時間で,灌流画像で低灌流であるが,まだ救済可能な脳領域をある程度の広さ(>10ml)有する脳梗塞患者に対するrt-PA静注の有効性を検証するためのプラシーボ対照RCTである(目標症例数=310).一次アウトカムは90日後の機能予後良好(mRS 0~1).相対危険度(RR)についてはベースラインの年齢と重症度で調整.灌流画像の解析にはRAPIDを使用.

【結論】

本試験は,2018年5月に先行して発表されたWAKE-UP試験の結果(文献1),臨床均衡が喪失したため,新規登録が中止された.登録打ち切りまでの割り付け症例はアルテプラーゼ群n=113,プラセボ群n=112.
一次アウトカムはアルテプラーゼ群で35.4%,プラセボ群で29.5%が満たした(調整後RR 1.44,p=0.04).症候性脳内出血の発症は各6.2%,0.9%(調整後RR 7.22,p=0.05).

【評価】

rt-PA静注による再灌流療法の適応を発症4.5時間以内とする現行ガイドラインは,主に単純CTに基づく患者選択を元にした複数のRCTのメタアナリシスから導かれたものであった.一方,脳組織灌流を鋭敏に反映するCTP/MRPは,ペナンブラ救済を目的とする再灌流療法の適応判定により適した画像評価方法である.
本研究の対象患者は,「18歳以上」,「mRS<2」,「NIHSS 4~26」,「灌流画像において低灌流であるが虚血コアでないミスマッチ脳領域を10ml以上有する(RAPIDによる自動判定)」患者とした.虚血コアは「脳血流が正常の30%以下か、拡散強調MRIにおけるADC値の虚血閾値以下(文献2)」とし,低灌流域を「最大濃度到達時間(Tmax)>6秒」とした.「低灌流域/虚血コア体積比が1.2以上」かつ「両者の差が10ml以上」である場合をミスマッチ領域ありと設定している.
脳梗塞の約1/4は入眠中に発症するが,これらの症例に対する血栓溶解療法の有効性のエビデンスを,2018年発表のWAKE-UPで試験ではDWIとFLAIRミスマッチ症例において示し,本EXTEND研究では灌流画像で救済可能な病変を有する患者において示した.
発症後の時間に関しては,血管内血栓回収療法(EVT)に関するDAWN試験(文献3)やDEFUSE3試験(文献4)では最終未発症確認時刻を発症時間と仮定して検討されている.本研究は対象症例のうち65%を占める起床時発見例(有症状例)に関しては睡眠時刻中央値を発症時間と仮定し,その時刻からランダム化までが9時間以内であるものを対象に含んでいる点にも注目したい.
アルテプラーゼ群における症候性脳出血発症率は,既報のEPITHET試験(7%)やDAWN,DEFUSE3(各6%)と同等であり,合併症に関して明らかな問題は指摘できない.
本研究における問題点としては“door to needle time(着院からアルテプラーゼ投与開始までの時間)”は約2時間と推奨時間より遅い点や,おそらく研究が途中で中止された影響で,調整前一次アウトカムに有意差が得られていない点(p=0.35)などの課題は残り,今後,この時間枠での急性期脳梗塞患者に対する血栓溶解療法に関する更なる臨床試験が望まれる.
ちなみに本EXTENDED試験は,均衡喪失(loss of equipoise)のために中止となった研究であるが,DWIとFLAIRミスマッチ症例を対象としたWAKE-UP試験とは患者選択基準が異なっており,本当に中止が妥当であったのだろうかというのは,監修者の私見である.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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