脳震盪後の認知症予防にスタチン

公開日:

2019年7月3日  

最終更新日:

2019年7月5日

Association Between Statin Use and Risk of Dementia After a Concussion.

Author:

Redelmeier CA  et al.

Affiliation:

Department of Medicine, University of Toronto, Toronto, Ontario, Canada, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:31107515]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2019 May
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

トロント大学のチームは脳震盪後患者の認知症状を予防するためのスタチン投与の有効性を検証した.対象は,入院を必要としない程度の脳震盪と診断された66歳以上の高齢者で,1993~2013年までに登録,2016年までの期間,最低3年経過観察した.期間を通じて,28,815人が登録され,このうち7,058人(24.5%)には発症90日以内にスタチンが処方されていた.

【結論】

全体で,中央値3.9年間の追跡期間で,4,727人が認知症と診断された,これは全症例の約1/6に相当する.認知症発生率は健常者の約2倍強であった.スタチンが投与されていた患者は,非投与患者に比較して認知症の発症頻度は13%低かった(相対リスク0.87;95% CI,0.81~0.93;P<0.001).スタチン使用に伴う認知症のリスク低下効果は種々の患者グループで認められ,経年的に増大し,心血管疾患薬の使用とは独立していた.一方,うつのリスクは改善しなかった.

【評価】

動物実験ではスタチンが脳浮腫,酸化ストレス,アミロイド蛋白凝集,神経炎症の軽減をもたらし,脳血流の維持を含む神経保護作用によって,アルツハイマー病,血管性認知症などの認知症の発症を抑制する可能性が示唆されている(文献1,2).一方,スタチンは,一旦発生した認知症の改善をもたらさないこともわかっている(文献3).脳震盪は認知症のリスク因子であり,コントロールに比較して2倍以上の発生率である.頭部外傷に対するスタチン投与に関する,これまでの4報のRCTのうち2報はスタチンの認知症発生抑制効果を示し,2報はそれを否定している.非ランダム化試験の11報もその結論は2分されている.本研究では,脳震盪受傷後の90日以内にスタチンが処方されていた患者では認知症の発生リスクが13%低減することを示した.スタチンの種類では,ロスバスタチンの抑制効果が最も高かった(RR:0.78 [0.67~0.91]).一方,平行分析された足関節ねんざの患者307,890人では,認知症の年間発生率は健常者とほぼ同一であったが,スタチン服用者では認知症発生は,非服用者に比較して5%と僅かに減少していた(95% CI,3%~8%;P<0.001).
本研究は,ランダム化前向き研究ではないので,未知の交絡因子の影響を排除出来ないが,3万人近い患者を対象とした最低3年という長期にわたる観察研究で,スタチンの認知症低減効果を示唆した意義は大きい.もちろん,大規模なRCTが出来れば理想的であるが,現在のようにスタチンの内服が普及している社会で,プラシーボ群に割り付けられる可能性は研究参加者の動機付けを阻害する可能性がある.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

鮫島芳宗

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