髄膜リンパ管系の賦活で膠芽腫の免疫特権を打ち破る:Natureより

公開日:

2020年2月12日  

最終更新日:

2020年2月13日

VEGF-C-driven lymphatic drainage enables immunosurveillance of brain tumours.

Author:

Song E  et al.

Affiliation:

Department of Immunobiology, Yale University School of Medicine, New Haven, CT, USA.

⇒ PubMedで読む[PMID:31942068]

ジャーナル名:Nature.
発行年月:2020 Jan
巻数:577(7792)
開始ページ:689

【背景】

脳には通常のリンパ流が欠如していることから,膠芽腫はCD4T細胞,CD8T細胞を介した腫瘍免疫監視・反応を逃れて増殖すると考えられている.一方,最近,髄膜リンパ管を構成要素とする脳リンパ流システムという概念が提案され,多発性硬化症等の炎症性疾患における病態成立に関与している可能性が示されている(文献1,2).深頚部リンパ管は,この髄膜リンパ管シシテムのドレナージルートである.岩崎明子ら米エール大学のチームはマウス膠芽腫モデルにおいて,髄膜リンパ系への操作が,抗腫瘍免疫を高める事を明らかにした.

【結論】

マウス脳への膠芽腫細胞(GL261)移植モデルにおいて,リンパ管新生因子であるVEGF-Cを組み込んだアデノウィルス関連ベクター(AAV-VEGF-C)の大槽内注入は静脈洞交会内と上矢状静脈洞内の髄膜リンパ管のリモデリング(リンパ管面積比の増加)をもたらした.
予防的に同処置を受けたマウスでは,ほぼ完全な腫瘍拒絶が起こり,生存延長が得られた.この効果は,深頚部リンパ管の結紮,抗CD8 抗体・抗CD4抗体の投与によって低下した.VEGF-C投与下で生存したマウスの腹部皮下にGL261を注入しても腫瘍の生着増大は認められず,腫瘍免疫記憶が長期に維持されることが示された.

【評価】

中枢神経におけるリンパ管の欠如は,脳悪性腫瘍が免疫監視からのがれ(免疫特権),野放図に成長することにつながっている.また,そのため,免疫チェックポイント阻害剤も充分な効果を上げていない(文献3).一方最近,脳にもある種のリンパ流が存在し,髄膜リンパ管がその構成要素であることが示唆されている(文献1).髄膜リンパ管のアブレーションは,多発性硬化症の動物モデル中の病的変化を減少させ,脳反応性T細胞の炎症応答を低下させるという報告もある(文献2).また髄膜リンパ管系の流出路にある頚部リンパ節が中枢神経系における抗原認識のサンプリングに関わっていることも報告されている.最近,抗PD-1抗体投与を受けた膠芽腫患者では,腫瘍浸潤リンパ球の数とリンパ管新生因子のVEGF-Cの発現が相関することが報告されている(文献4).これらの事実ならびに本実験結果は, 髄膜リンパ管系が中枢神経悪性腫瘍,炎症性疾患等において免疫監視を支配しており,治療的介入のための重要な標的となることを示唆している.今後の発展に期待したい.
本文中では,GL261移植マウスに対する抗PD-1抗体投与とVEGFC mRNA/GFP mRNA脳槽内注入,悪性黒色腫脳移植モデルに対する抗PD-1抗体,抗CD4抗体,VEGFC mRNAの投与の結果も示されている.脳腫瘍に関わる者が是非読んでおくべき論文である.

執筆者: 

比嘉那優大   

監修者: 

有田和徳

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