Tステントを用いた脳主幹動脈分岐部の広頸動脈瘤のコイリング:102例の長期予後

公開日:

2020年2月14日  

最終更新日:

2020年2月15日

Long-term outcomes of wide-necked intracranial bifurcation aneurysms treated with T-stent-assisted coiling.

Author:

Aydin K  et al.

Affiliation:

Department of Neuroradiology, Istanbul University, Istanbul Medical Faculty, Istanbul, Turkey

⇒ PubMedで読む[PMID:31812140]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2019 Dec
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

動脈分岐部の広頸動脈瘤に対するコイル塞栓術では2個のステントをX型,Y型に配置してコイルの母血管への突出を防いできたが,ステントの一部が母動脈の血管腔内に突出するので,内皮化しにくく,血栓塞栓性合併症の怖れがあった.本論文は,最近導入されたTステント手技,すなわち2個のステントを重なりや交叉のないT字型に配置するテクニックを用いたコイル塞栓術の長期成績に関する後方視研究である.症例は102例.

【結論】

治療直後の動脈瘤閉塞率は83.3%,周術期合併症13.7%,恒久的障害1.9%,死亡率1%であった.80例で実施された6ヵ月目以降(平均30ヵ月後)の血管撮影で90%が完全閉塞(Raymondクラス1)で,経過中1例(1.3%)が再治療を要した.遅発性の血栓塞栓性の合併症は4例(3.9%)で発生したが,恒久的症状は残さなかった.最終追跡時,全例がmRS≤2であった.

【評価】

実際の手技は,二本の分岐動脈(daughter vessels:娘動脈)に挿入した二本のマイクロカテーテルからステント(Leo+Baby,TM)を送り込み,中途まで展開した状態にして,コイルが逸脱しないよう足場を作る.あらかじめ動脈瘤内に置いた(jailed)マイクロカテーテルからコイルを送り込み,ステントが動脈瘤内に入りこまないように適切なコイルメッシュの形状を作る.その後に,一側の娘動脈内で短いステントを充分に展開して,その近位端を動脈瘤頸部に置く.もう一本の長いステントは,他側の娘動脈から母動脈にかけて展開して,重なりのないT字型(X型でもY型でもない)に配置する.その後に,動脈瘤内に残したマイクロカテーテルからコイリングを続行し,充分なパッキングを行う.
既に著者らは本治療手技の中期成績(追跡期間平均9.3ヵ月)を報告しているが(文献1),本報告は,ドイツ,トルコなどで102人(うち破裂瘤は3例)に実施された本治療手技の長期成績である.MCAが38%,Acomが21%,BA-bifurcationが17%を占めている.その結果,高い閉塞率(90%),低い血栓塞栓性合併症率(3.9%),低い再治療率(1.3%)を達成した.
アイデアとしては良くわかる手技であるが,実際にはステント展開に伴う短縮を考慮する必要性もあり,至適な位置にステント(特に短い方)を留置することはなかなか難しそうである.本論文によれば,安全性は高そうであるが,実際の実施件数の約6割は血管内治療では世界的に高名なエッセンのChapotらが実施していることには留意しておく必要性がある.また,周術期に限れば13%の合併症があり,これに対してステント内PTA,tirofiban(抗血小板剤)投与,さらにステント抜去を行なっており,やはりかなり高難度の治療手技と判断したい.
また,本研究の対象症例の約4割は未破裂中大脳動脈瘤であり,日本であれば,こんなに難しいテクニックを用いなくても多くの施設において安全・確実なクリッピングが可能である.クリッピングをする術者がいなくなっているというヨーロッパならでは治療形態とも言える.
一方,世界的には,末梢性の広頸動脈瘤に対して,フローダイバーターステント(文献2)やWEB(Woven EndoBridge)(文献3)の導入も進んでおり,本報告のT字型ステント+コイルによる治療成績との比較はこれからの課題である.

執筆者: 

田中俊一   

監修者: 

西牟田洋介、有田和徳

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