症候性頭蓋内動脈狭窄の病態(OXVASC研究):先行のRCT(SAMMPRIS,VISSIT)の結果は一般化出来るか

公開日:

2020年6月11日  

最終更新日:

2020年6月11日

Prevalence, Predictors, and Prognosis of Symptomatic Intracranial Stenosis in Patients With Transient Ischaemic Attack or Minor Stroke: A Population-Based Cohort Study

Author:

Hurford R  et al.

Affiliation:

Wolfson Centre for the Prevention of Stroke and Dementia, Nuffield Department of Clinical Neurosciences, University of Oxford, Oxford, UK

⇒ PubMedで読む[PMID:32333899]

ジャーナル名:Lancet Neurol.
発行年月:2020 May
巻数:19(5)
開始ページ:413

【背景】

頭蓋内主幹動脈狭窄に対するステント術の有効性を否定したSAMMPRISとVISSITOの結果は一般化出来るのか.OXVASCはオックスフォードシャーの住民(94%が白人)を対象に,この問題を検討した.2011~2018年に,OXVASC施設を受診したTIAあるいは軽症脳梗塞(NIHSS≦3)患者は1,579例で,このうち1,368例がMRA等で頭蓋内血管イメージング検査を受けた.この1368例中241例(17.6%)(平均年齢76歳)が385個の頭蓋内血管狭窄部(50~99%)を有していた.頭蓋内血管狭窄の有病率は高齢者ほど高かった(<70歳:4.9%,≧90歳:19.6%).

【結論】

発症後すべての患者が強化薬物療法を受けた.症候性の狭窄を有していた94例では,中央値2.8年の追跡期間内に14例(14.9%)で脳卒中の再発(虚血:12例,出血:2例)が認められた.症候性狭窄群は狭窄のない群に比較して高い虚血性脳卒中リスクを示した(調整HR 1.43,95% CI 1.04~1.96).70~99%の症候性狭窄症例における同一血管領域の虚血性脳卒中再発リスクは先行する頭蓋内ステントに関する2つのRCT(SAMMPRIS,VISSIT)の非ステント群より低い傾向であった(例:1年でOXVASC 5.6 vs VISST 9.4%).

【評価】

先行する頭蓋内ステントに関する2つのRCT(SAMMPRIS,VISSIT)は,ステント手術は強化薬物治療群(DAPT[1ヵ月間],高容量スタチン,降圧剤など)に対する優位性を示すことはなく,試験は途中で中止になった(文献1,2).これを受けて,AHA/ASAガイドライン上,症候性頭蓋内狭窄に対する初期治療としてのステントは非推奨となっている(文献3).一方,これらのRCTでは,対象患者が若かった(年齢中央値<60)ために,薬物治療群における脳梗塞再発のリスクが予測よりも少なかったことが影響している可能性あり,このため,この試験結果の一般化には疑問が呈されていた(文献4,5).
しかし,この住民ベース(OXVASC)の研究では,70~99%という2つのRCTと同じ狭窄率で比較した場合,同一領域の虚血性脳卒中再発リスクは,2つのRCTの非ステント群に比較して,同等か低い傾向を示した.
この結果を受けて,著者等は,少なくとも白人(Caucasian)では,年齢にかかわらず,先の2つのRCTの結果は一般化することが出来,症候性頭蓋内動脈狭窄に対する(強化)薬物療法の役割を支持するものであると結んでいる.

オックスフォード大学のPeter Rothwell教授が率いるOXVASC研究は,オックスフォードシャー州のうち約100名の家庭医を擁する9つのプライマリーケアに登録されている約9.3万人を対象とした脳卒中に関する住民ベース前向き登録研究である(文献6).脳卒中の1次,2次予防に関する重要な疫学データを次々に発表している.

執筆者: 

永野祐志   

監修者: 

有田和徳

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