腹腔側偽嚢胞によるシャント機能不全に対する腹腔側チューブの肝上スペースへの入れ替え

公開日:

2020年6月11日  

最終更新日:

2020年6月11日

Suprahepatic Space as an Alternative Site for Distal Catheter Insertion in Pseudocyst-Associated Ventriculoperitoneal Shunt Malfunction

Author:

Habibi Z  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery and Pediatric Surgery, Children’s Medical Center, Tehran University of Medical Sciences, Tehran, Iran

⇒ PubMedで読む[PMID:32413860]

ジャーナル名:J Neurosurg Pediatr.
発行年月:2020 May
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

脳室腹腔シャント手術における腹腔側の偽嚢胞の形成は,シャント機能不全の主要な原因のひとつである.小児の場合は,腹腔容積が狭いので,腹腔側チューブの新たな挿入部の選択肢が限られる.テヘラン大学脳外科チームは,偽嚢胞形成による腹腔側チューブ機能不全を来した小児水頭症患者12例(5ヵ月~14歳)に対して,肝上部(横隔膜下)スペースへの腹腔側チューブ挿入を行った.

【結論】

中央値31ヵ月の経過観察期間中,腹腔側チューブの機能不全は観察されなかった.
肝上部のスペースには腸間膜-大網が存在しないことが,腹腔側チューブの機能不全が少ない理由と思われた.

【評価】

水頭症に対する脳室腹腔短絡管の機能不全は頻繁に発生し,その25%は腹腔側チューブ機能不全で,13.5%は腹腔側チューブ周囲の偽嚢胞が原因と報告されている(文献1).偽嚢胞に対するドレナージや抗生剤投与の後に,腹腔側チューブの再建を行ってもチューブ機能不全の再発率は43%と高い(文献2).本論文では,偽嚢胞形成による腹腔側チューブ機能不全の12症例の再建術において,腹腔側チューブを肝上部スペースに挿入したところ,31ヵ月の経過観察期間中で腹腔側チューブ機能不全の再発がなかったことを示している.

あれ,と思う論文である.なぜなら,本サマリーの作成者が40年前の研修医時代に学んだのも腹腔側チューブを右季肋部の創から肝上部スペースに挿入する手技であったからである.
初回手術における肝上部スペースへの腹腔側チューブ留置が腹腔内挿入と比較して,機能不全が少ないことは既に報告されている(文献3).しかし,何故か最近は剣状突起下や臍部からダクラス窩に向けて腹腔側チューブを挿入することが多い.
自分の古い経験でも,肝上部スペースに入れたつもりでも,実際はダグラス窩に落ちていることも多かったので,次第によりシンプルなダグラス窩挿入に代わっていったのかもしれない.
本文中の写真を見ると,少なくとも7~8cmはありそうな結構大きな皮膚切開で,しかも挿入手技は小児外科医の手によると書かれている.おそらく,腹腔側チューブを確実に肝上部スペースに入れるためには,このくらいの皮膚切開は必要なのであろう.
現在,日本では腹腔側チューブトラブルの症例は小児外科医と組んで腹腔鏡下に挿入する方法が一般的で,小さな皮膚切開で腹腔内のベストな部位を確認しながら,挿入できるので,敢えて大きな皮膚切開で肝上部スペースに挿入する必要性はない.しかし,腹腔鏡が利用出来ない環境であったり,繰り返す腹腔内チューブトラブル症例では肝上部スペースも選択肢に入ってくるかも知れない.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

大吉達樹

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