水頭症シャント手術に対する1年以内の再手術率は74%:米国再入院データベース(NRD)2015年の8459例の解析

公開日:

2020年6月11日  

最終更新日:

2020年6月11日

Readmission and Reoperation for Hydrocephalus: A Population-Based Analysis Across the Spectrum of Age

Author:

LeHanka A  et al.

Affiliation:

University of Notre Dame, Notre Dame, Indiana, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32470941]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2020 May
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

水頭症はごくありふれた脳外科疾患であるが,臨床現場での再入院,再手術の実態,またそれが医療コストに及ぼす影響は十分に把握されていない.本論文は,米国の再入院データベース(NRD)から抽出した,2015年に行われた水頭症手術8,495例の解析である.手術の種類はシャント挿入(VPかLPかは不明)3,406例,シャント再建4,534例,内視鏡下第三脳室底開窓術(ETV)1,308例.

【結論】

再入院は30日で16%前後,1年で48%前後,年齢層で違いはなかった.一回目再入院に関わる費用は米国全体で23億ドル/年と推定された.再入院の理由のなかで多かったのは,シャントデバイスの不調(complication)で13~21%を占めた.初回手術から1年以内の再手術率は,シャント挿入後で74.2%,シャント再建後63.9%,ETV後34.5%であった.乳児(<1歳)の1年以内の再手術率は78.6%と他の年齢層より高かった(p<0.0001).その他,低所得層群,緊急入院群,週末入院群で1年以内の再手術率が高かった(何れもp<0.0001).

【評価】

従来,臨床研究の一環で報告されているシャント挿入後1ヶ月以内の再手術率は13~22%前後(文献1,2)であるが,本研究では1ヶ月以内で38%と約2倍で,1年以内の再手術は74%に達している.このreal worldの実態は,脳外科の手術の中では最も基本的で,多くは若い脳外科医や脳外科研修医が行うことの多いこの手術が,決して単純かつ容易なものではないことを示している.
著者等は,研修中の若い脳外科医に対して,最善手技(best practice)をたたき込む(inculcate)必要性を強調しているが,一方でシャント手術がまだ完成された手技ではなく,より確実な術前評価,手術手技,術後管理のスタンダード化が必要なことを示しているように思われる.
この点に関して日本では,シャント手術は研修医や若手脳外科に任すのではなく,特にこども病院などでは熟練した小児神経外科専門医が,体位,手術室での頭の位置,スタッフの入室制限,皮膚切開デザイン,消毒の回数などをルール化して行うようになってきている.また現在,日本国内多施設で小児水頭症に対するVPシャントの治療効果の調査研究が進行中であるが,調査内容にはこれらのルールの中身の評価も含まれおり,近い将来,日本発のスタンダードが登場することが期待されている.

2010年にオバマ政権下で成立した医療制度改革の1つに,従来の「量」に対する支払い(出来高払い)に対する,医療の価値に対する支払い(pay for performance)の導入がある.この中には,退院後30日以内の再入院に対してペナルティを設けるHospital Readmission Reduction Program(再入院削減プログラム,HRRP)が含まれている.これと期を一にして,2010年から整備されたNational Readmission Database(NRD)は全ての入院患者の再入院に関するデータ提供しており,28州,全米の約50%の人口をカバーし,毎年約1700万人の退院データが登録されている.最近脳外科領域でも,このデータベースを用いて,先進医療施設だけではない,一般医療施設を含む全米でのreal worldの医療の実態が報告されてきた(文献3,4).住民レベルでの,脳外科を含めた医療の課題と克服の方策を明らかにするための重要な武器となっている.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

大吉達樹

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