一般人口における脳動脈瘤発生の危険因子:ロッテルダム研究から

公開日:

2020年7月22日  

最終更新日:

2020年7月23日

Determinants of the Presence and Size of Intracranial Aneurysms in the General Population: The Rotterdam Study

Author:

Cras TY  et al.

Affiliation:

Department of Radiology and Nuclear Medicine, Erasmus MC, Rotterdam, the Netherlands

⇒ PubMedで読む[PMID:32517578]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2020 Jul
巻数:51(7)
開始ページ:2103

【背景】

エラスムス大学のチームは彼らが管理運営しているロッテルダム研究コホートを基に,全く選別されていない住民ベースでの脳動脈瘤発生頻度,脳動脈瘤発生にかかわるリスク要因を解析した.対象は,同コホートのうち2005~2015年に頭部MRIを施行した5841例.

【結論】

134例(2.3%)に149個の未破裂動脈瘤が認められた.動脈瘤体積は中央値61.1 mm3(IQR,33.2~134.0).多変量解析では,未破裂動脈瘤の存在と有意に相関したのは,女性(OR 1.92),高血圧(OR 1.73),現在の喫煙(OR 3.75)であった.アルコール,身体活動性,食事の質は関係しなかった.
白血球数は動脈瘤体積と相関した(白血球109個/Lの増加につき体積は33.6mm3の増加).

【評価】

これまでも,未破裂動脈瘤発生のリスクに関しては,女性,高血圧,喫煙などが報告されてきたが(文献1,2),住民ベース研究は少なかった.本研究は,良く整備された全く選別されていない住民ベースコホートであるロッテルダム研究コホートを基にして未破裂動脈瘤発生のリスク因子を抽出したものである.
これによっても,女性,高血圧,現在の喫煙が高いオッヅ比を示すリスク因子であることが示された.
興味深いのは,高い白血球数が未破裂動脈瘤の大きさのリスク因子であった点である.この点に関連して,過去にスウェーデンからベースラインの白血球数が多い住民でクモ膜下出血が増加することが報告されている(文献3).また,動脈瘤壁の造影所見すなわち炎症所見が動脈瘤の増大と関与するとの報告や(文献4,5),抗炎症剤(eg,アスピリン)が破裂を予防するかも知れないという報告もある(文献6).今後,全身的あるいは動脈瘤局所の炎症反応と動脈瘤の発生,増大,破裂の関係がより大規模コホートで検証されるべきである.
ロッテルダム研究は,1990 年からロッテルダム郊外の25,000の人口を擁するOmmoord地区の45歳以上の人口を対象に実施されている,心血管疾患,眼科疾患,神経疾患,精神科疾患などの発生に関わる因子を追求する長期追跡前向きコホート研究である.今日までに約14,000人が登録されている(文献7).既にこのコホートからは1500本以上の論文,レポートが発表されており,高齢化社会における疫学,疾病構造の変化,疾病の背景因子などについて重要な知見を提供している.
ただし,登録住民の大部分がコーカソイドなので,この結果を直ぐにアジアや日本に当てはめることは出来ない.
ちなみに,本文中で未破裂の前交通動脈瘤として示されている3葉のMRI写真のうち1枚(冠状断)は動脈瘤ではなくガレン静脈.一流雑誌でも間違いはたくさんある.

執筆者: 

岡田朋久   

監修者: 

有田和徳、井川房夫

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する