COVID-19陽性患者の虚血性脳卒中リスクは高い:ニューヨーク市におけるインフルエンザ患者との比較

公開日:

2020年7月14日  

最終更新日:

2020年7月23日

Risk of Ischemic Stroke in Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) vs Patients With Influenza

Author:

Alexander E  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Weill Cornell Medicine, New York, NY, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32614385]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2020 Jul
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:e202730

【背景】

COVID-19陽性患者では虚血性脳卒中のリスクが高まる可能性が指摘されている(文献1,2,3).しかし,これらの報告は,適切な対照群との比較がない.ニューヨーク市ワイルコーネル・メディスンのチームは,2020年3月4日~5月2日に関連2病院で救急外来を受診したか入院した1916名のCOVID-19患者(PCR陽性)を,2016年1月~2018年5月に救急外来を受診したか入院したインフルエンザA/B陽性患者1486名と比較した.

【結論】

COVID-19患者群全体では31人(1.6%)が,入院患者では1.8%が虚血性脳卒中を発症した.COVID-19発症から脳卒中発症までは中央値16日(IQR,5~28)であった.一方インフルエンザ患者群では0.2%であり,COVID-19患者群の方が虚血性脳卒中を有するリスクは高かった(オッヅ比7.6;95%CI,2.3~25.2).心血管リスク因子,ウィルス関連呼吸器症状,ICU入院の有無などの違いを調整した感度分析でもやはり,COVID-19患者群の虚血性脳卒中リスクは高かった.

【評価】

既に武漢からは,COVID-19陽性入院患者の虚血性脳卒中患者の割合は2.8%あるいは5%と高いことが報告されている(文献1,2).一方,ニューヨークMt. Sinai病院からは年齢は33~49歳の比較的若年で,過去にリスク因子が無いCOVID-19陽性患者5人に脳主幹動脈閉塞が発症したことが報告されている(文献3).ただしこれらは,何れも対照の無い事例報告であった.
本研究では同じ気道系ウィルス感染症であるインフルエンザ患者群を対照としたことによって,改めてCOVID-19患者群では虚血性脳卒中を示すリスクが有意に高いことを明らかにした(オッヅ比7.6).
COVID-19陽性患者で,虚血性脳卒中のリスクが高い理由として,強い炎症反応によって,Dダイマーや抗リン脂質抗体の上昇を伴う血液凝固異常を引き起こすこと(文献5,6).またCOVID-19陽性患者では,虚血性脳卒中のリスク因子である心房性不整脈,心筋梗塞,心不全,静脈血栓症を伴いやすいことが挙げられている.
もしかして,介護施設や自宅などでのCOVID-19陽性死亡者の中には,重篤な脳卒中が直接の死因となっている患者がいるかも知れない.いずれにしても,COVID-19による血液凝固異常発生メカニズムの解明と治療法の開発は急務である.

執筆者: 

有田和徳