くも膜下出血急性期患者の収縮期血圧とその変動が治療転帰に及ぼす影響

公開日:

2020年10月13日  

最終更新日:

2020年10月14日

Effect of Blood Pressure Variability During the Acute Period of Subarachnoid Hemorrhage on Functional Outcomes

Author:

Ascanio LC  et al.

Affiliation:

Neurosurgical Service, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, Massachusetts, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:32078677]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2020 Sep
巻数:87(4)
開始ページ:779

【背景】

くも膜出血後患者の血圧は一般に高く,放置すれば動脈瘤の再破裂を招くが,下げ過ぎると脳微小循環不全を招く危惧がある.ハーバード大学のチームは,動脈瘤破裂後24時間以内にNICUに受け入れ,その後24時間以内の血圧が毎時測定され,治療後の長期追跡が可能であった202例(女性66%,平均年齢57歳)を対象に入院後24時間の収縮期血圧ならびにその変動と治療転帰との関係を求めた.追跡期間中央値18ヵ月で,57例(29%)が転帰不良(mRS:3~6)であった.動脈瘤処置までの中央値は10時間(3~16時間),血管内治療が75%,クリッピングが16%で,動脈瘤の再出血は2%に生じた.追跡期間中央値は18ヵ月.

【結論】

転帰不良患者の収縮期血圧は,SD値が高く(p=0.01),ピーク値[複数回測定のうち最高値-平均値]が大きく(p=0.02),トラフ値[平均値-複数回測定のうちの最低値]が大きく(p <0.01),変動係数[SD値/平均値]が大きく(p<0.01),最低値が低かった(p<0.01).ロジスティック回帰解析では,収縮期血圧最低値の1mmHg上昇に伴って,良好転帰(mRS:1~2)はオッズ比1.03で上昇した(p=0.04).転帰不良例は入院後10~16時間での収縮期血圧平均値が低い傾向にあり,感度解析でも低い収縮期血圧は独立した転帰不良因子であった(p=0.03).

【評価】

本研究は1施設(Beth Israel Deaconess Medical Center)における連続202例のくも膜下出血患者を収縮期血圧の観点から最終追跡時治療転帰(mRS)との関係を求めたものである.この施設では,患者受け入れ後動脈瘤処置までは,収縮期圧は<140mmHgで管理し,動脈瘤処置後は平均血圧70~130mmHg,収縮期血圧<160mmHgを受容している.従来から,くも膜下出血急性期では,高血圧による出血性合併症の予防と脳灌流圧維持のバランスの観点から収縮期血圧<160mmHg(米国脳卒中協会,文献1),あるいは<180mmHgが推奨されてきた(欧州脳卒中機関,文献2).
本研究は,くも膜下出血のどの重症度(HH:1~5)でも,入院後24時間以内の収縮期血圧最低値が高いほど転帰が良好である事を明らかにした.特に転帰不良例では入院後10~16時間で収縮期血圧平均値が低下する傾向を示しており,収縮期血圧を一定以上に維持することの重要性を改めて示している.
一方最近,収縮期血圧変動(Systolic BP variation:SBPV)が,心血管疾患のリスク因子であり,収縮期血圧そのものよりも影響が大きいという報告もある(文献3,4).本研究でも大きなSBPV(SD値,ピーク値,トラフ値,変動係数)がくも膜下出血患者の転帰不良と相関することを明らかにした.
本研究によって,くも膜下出血急性期患者の収縮期血圧最低値が低いと,また収縮期血圧の変動が大きいと長期の転帰が悪いことは良くわかった.では,収縮期血圧最低値をいくらでキープすれば良いかは明らかにはされていない.本文中では収縮期血圧最低値の閾値を90mmHgとした場合と,85mmHgとした場合の転帰不良と相関を検討しているが,いずれも有意ではなかった(OR=2.06,p=0.22とOR=3.83,p=0.06).
これには,症例数が少なかったこと(収縮期血圧最低値<90mmHgが23例,<85mmHgが14例)が影響している可能性が伺え,より大規模集団での検討が必要と思われる.

執筆者: 

有田和徳

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