トラネキサム酸は慢性硬膜下血腫術後の血腫量を早期に減少させる

公開日:

2021年1月11日  

Prospective Study on the Efficacy of Orally Administered Tranexamic Acid and Goreisan for the Prevention of Recurrence After Chronic Subdural Hematoma Burr Hole Surgery

Author:

Yamada T  et al.

Affiliation:

Department of Emergency Medicine, Iizuka Hospital, Fukuoka, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:31678452]

ジャーナル名:World Neurosurg.
発行年月:2020 Feb
巻数:134
開始ページ:e549

【背景】

慢性硬膜下血腫の多くは穿頭洗浄術あるいは穿頭ドレナージで治癒するが,再発は10%前後と決して稀ではない.再発予防効果に期待してデキサメタゾン,トラネキサム酸,スタチン,ACE阻害剤などが,また日本では経験的に五苓散が使用されているが,質の高いエビデンスには乏しい.飯塚病院のYamadaらは慢性硬膜下血腫穿頭洗浄術後の232例をランダムに3群に分けて,手術の翌日から72例にトラネキサム酸750 mg/日を,78例に五苓散7.5 g/日を3ヵ月間投与し,82例にはいずれも投与しなかった.初回手術後3ヵ月間の再発(=再手術)頻度,CT上の血腫量を3群間で比較した.

【結論】

3群間で年齢・性,術前の抗血栓剤などの薬剤服用状況,高血圧や糖尿病などの併存疾患,術前血腫量などに差はなかった.
再発はトラネキサム酸群で1例(1.4%),五苓散群7例(9.0%),非投与群8例(9.8%)で,有意差はなかった(p=0.083,X2検定).
術後1,2,3ヵ月目での残存血腫量は,トラネキサム酸群では他の2群に比較して有意に小さかった(p<0.01~0.03).

【評価】

トラネキサム酸はプラスミノーゲンの活性化を抑制してフィブリン分解を抑え,結果として慢性硬膜下血腫内壁からの微小出血を抑制すると考えられる.五苓散はAQP4の抑制と駆水効果によって慢性硬膜下血腫の増大を抑制すると考えられている.
本ランダム化試験では,トラネキサム酸群,五苓散群,非投与群の3群間で再発率には差はなかったが,術後血腫量はトラネキサム酸群で最も早く縮小することが明らかになった.また,再発率に差はないとはいえ,トラネキサム酸群1.4%,五苓散群9.0%,非投与群で9.8%であり(p=0.083),症例数がもう少し増えれば,有意差が出そうである.
最近,慢性硬膜下血腫に対する初療あるいは穿頭術後の再発予防の目的で投与される種々の薬物の治験結果が公表されているが(文献1,2,3,4,5,6),まだ,決定打と言えるものはない.
本研究結果はトラネキサム酸の有効性を示唆させるものであり,今後多施設大規模の前向き研究で再度検証すべきである.ただし高齢者には,脳梗塞や狭心症・心筋梗塞の既往や腎機能障害を有する患者,臥床がちの患者が多いのでトラネキサム酸長期投与による血栓・塞栓症のリスクへの配慮は必要であろう.
なお,このテーマについては最近優れたレビューが発表されたので参照されたい(文献6).

執筆者: 

有田和徳