COVID-19パンデミック期間は脳卒中関連の救急要請コールが減り超過死亡数が上昇する

公開日:

2021年1月26日  

最終更新日:

2021年3月5日

Excess Cerebrovascular Mortality in the United States During the COVID-19 Pandemic

Author:

Sharma R  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, Division of Vascular Neurology, Yale School of Medicine, New Haven, CT

⇒ PubMedで読む[PMID:33430638]

ジャーナル名:Stroke.
発行年月:2021 Jan
巻数:52(2)
開始ページ:563

【背景】

COVID-19パンデミックが脳卒中医療に及ぼす影響とその因子についてはまだ詳細ではない.エール大学のSharmaらは,米国National Center for Health Statistic等のデータベースを用いて,米国40州とニューヨーク市におけるパンデミック期間中の脳血管障害(脳卒中)による超過死亡数とそれに影響する因子について解析した.対象期間は2020年1月から5月.米国における非常事態宣言は2020年3月13日に発出された.

【結論】

米国に於ける脳卒中による超過死亡数は,COVID-19感染者が急増し出したがまだ死亡数が少なかった2020年3月28日の週から5月2日までの週で上昇し,4月18日の週が最高で7.8%に達した.この間,脳卒中に関する救急要請コールと救急外来受診は最大約20%減少した.救急要請コールの減少はその後1週間(70死亡/1,000救急要請コールの減少),2週間(85死亡/1,000救急要請コールの減少)での脳卒中による超過死亡数と相関した.COVID-19による直接の死亡を調整後,家庭で過ごす時間の10%の上昇は4.3%の脳卒中死亡の上昇をもたらした.

【評価】

脳卒中救急では初療の遅れが死亡の増加につながることは良く知られているところであるが(文献1),この報告はCOVID-19パンデミックに対する “stay home” や “social distancing” の呼びかけが,救急要請コールの減少と救急外来受診を減少させ,結果として脳卒中による超過死亡数を生み出している可能性を示唆している.COVID-19パンデミック期間中の脳卒中患者救急受診数の減少は脳梗塞画像解析システムRAPIDの全米での使用数の減少からも推測されている(文献2).一方で,COVID-19感染者は虚血性脳卒中リスクが高く,脳主幹動脈閉塞を罹患しやすいことが指摘されている(文献3,4).
この研究では,心血管疾患でもパンデミック期間における救急要請コールの減少が超過死亡数と相関する事を示している(198死亡/1,000救急要請コールの減少).一方,アルツハイマー病に関してはそのような相関は認められていない.
救急要請コールと救急外来受診の減少は,stay homeメッセージが脳卒中発生の家族や介護・保護者への覚知を遅らせ,覚知しても軽症の場合は病院でのウィルス感染を畏れて救急外来受診をためらうためと推測される.
確かにstay homeやsocial distancingは感染の制御には必須の手段であるが,一方で脳卒中や心筋梗塞など緊急治療が不可欠な疾患については,患者とその家族が救急要請コールを躊躇することがないように広報することも重要と思われる.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

神田直昭