低髄液圧症候群を引き起こす胸椎レベルの髄液-静脈瘻に対する経静脈的塞栓術

公開日:

2021年6月12日  

最終更新日:

2021年6月12日

A Novel Endovascular Therapy for CSF Hypotension Secondary to CSF-Venous Fistulas

Author:

Brinjikji W  et al.

Affiliation:

Neuroradiology, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:33541895]

ジャーナル名:AJNR Am J Neuroradiol.
発行年月:2021 May
巻数:42(5)
開始ページ:882

【背景】

近年,特発性低髄液圧症(SIH)の原因の1つとして脊髄神経根鞘と周囲静脈の間の瘻孔(CSF-静脈瘻)の可能性が指摘されている(文献1).これに対する治療としては直達手術による結紮や神経根周囲静脈の剥離あるいは自己血/フィブリンパッチなどが行われている(文献2,3).メイヨークリニック神経放射線科のチームはこの病態に対する新たな治療として傍脊椎静脈の塞栓術を行った.対象はデジタル・サブトラクション・ミエログラフィー(DSM)でCSF-静脈瘻のポイントが確認出来た5症例.瘻孔レベルはT4-T9間で,4例が右側,1例が両側性.

【結論】

治療は奇静脈経由でCSF-静脈瘻部位にマイクロカテーテルを進め,神経根の周囲静脈をOnyx 34と18を用いて閉塞した.2例で塞栓部神経根の疼痛が1ヵ月持続した.治療後2~4ヵ月の経過観察段階で,4例では頭痛の完全消失が,1例では50%の頭痛改善が得られた.治療前に認められた低髄液圧症に伴う頭部MRI異常所見は全例で消失していた.

【評価】

CSF-静脈瘻が全SIH症例の原因のうちどのくらいを占めるかは不明であるが,典型的な臨床症状と頭部MRI所見を示しながらも脊髄硬膜外あるいは傍脊椎の髄液貯留を示さない症例をダイナミックミエログラフィー,陽圧CTミエログラフィー,DSMで詳細に調べていくと発見される可能性がある(文献4).その成因に関しては現段階では明らかではないが,神経根周囲のくも膜顆粒が周囲の静脈の中で破れる可能性が考慮されている(文献4).
本論文はこの瘻孔を静脈側から閉塞しようという初の試みの結果であり,優れた効果を示しているが,奇静脈経由での傍脊椎静脈へのアプローチは難しそうである.
神経根鞘からの脊髄硬膜外へのCSFリークによる一般的なSIHでは,治療の主体は自己血パッチであるが,CSF-静脈瘻に対しては効果が薄いという(文献5).ただ,充分な量の自己血で傍脊椎静脈の線維化による静脈圧の上昇を誘導すれば,症状は改善しそうな気もする.
今後,長期のフォロー,直達手術や自己血パッチなど他の治療法との比較を通して,CSF-静脈瘻に対する経静脈的塞栓術の意義が明らかになることを望みたい.

<コメント>
これまでのSIHの治療の主体はブラッドパッチであるが,これはSIHにおける主要な髄腋漏出部位である神経根鞘の周囲の組織圧を上げて髄腋漏出をブロックしようとするものである.一方,本論文で紹介された治療法は椎間孔外から静脈圧を上げ,髄腋の漏出をブロックしている.同じSIHでも髄液漏出のメカニズムが違えば治療方法が異なるのは当然である.ただし,SIHの中で 髄液が周囲組織に漏れ出さずに純粋にCSF-静脈瘻だけのものがどのくらいの頻度なのかは明らかにされなければならない.(川原 隆)

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

川原 隆