ライセート導入樹状細胞ワクチン療法は膠芽腫患者の生存期間を延長する:外部コントロール対照第3相試験の結果(NCT00045968)

公開日:

2022年12月20日  

最終更新日:

2022年12月30日

Association of Autologous Tumor Lysate-Loaded Dendritic Cell Vaccination With Extension of Survival Among Patients With Newly Diagnosed and Recurrent Glioblastoma: A Phase 3 Prospective Externally Controlled Cohort Trial

Author:

Liau LM  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University of California, Los Angeles, CA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:36394838]

ジャーナル名:JAMA Oncol.
発行年月:2022 Nov
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

近年他の癌種では自己腫瘍溶解液(ライセート)を導入した樹状細胞(DC)ワクチン療法(DCVax-L)の有効性が報告されている.本稿は,膠芽腫におけるDCVax-Lの有効性を検証した第3相前向き試験である(米国など4ヵ国94施設).対象は18~70歳の新規膠芽腫で,KPS70以上,余命8週間以上と推測された症例.期間は2007年からの約8年.331症例が登録され,手術後の標準治療(放射線+テモゾロミド)後,DCVax-L群(232例)かプラセボ群(99例)に無作為割付された.同時期に初発膠芽腫に対して標準治療が実施された5報告1,366例を外部コントロール群(初発膠芽腫ECP群)とした.

【結論】

治療は,毎月のテモゾロミド投与に加えて,0,10,20日目,2,4,8,12,18,24,30ヵ月目に,割り付けに基づいてDCVax-Lまたはプラセボが皮内投与された.
DCVax-L群と初発膠芽腫ECP群のOS中央値は,19.3ヵ月と16.5ヵ月であった(HR=0.80,p=.002).無作為化からの生存率は,48ヵ月後で15.7% vs. 9.9%であった.
プラセボ群のうち膠芽腫再発後にDCVax-Lの新規投与が行なわれた64例と再発膠芽腫ECP群(10報告640例)の再発確認後のOS中央値は,13.2ヵ月と7.8ヵ月であった(HR,0.58,p<.001).

【評価】

2005年のStuppレジメンの報告以降(文献1),初発膠芽腫に対して生存期間延長効果を示した追加治療は2017年に発表されたTTF(腫瘍治療電場療法)の報告以外にはなかった(文献2).本稿は,膠芽腫の標準療法にDCVax-Lを追加することで,初発膠芽腫および再発膠芽腫の両者に対して有意な生存期間延長を示した第3相試験の結果である.特に再発例における生存延長効果を初めて示した事は,ほぼ100%の再発率を示す膠芽腫の治療オプションとして重要な意義を持つ.
様々な癌種における分子学的背景の理解が進み,21世紀に入って殺細胞性抗がん剤から分子標的薬の開発へとパラダイムシフトが起こった.さらに,腫瘍微小環境における腫瘍免疫の機能が詳細となり,PD-1/CTLA-4系を標的とした免疫チェックポイント阻害薬が多数の癌種で劇的な有効性を示した.近年はDCワクチン療法により,さらに多くの癌種での生存期間延長が期待されている(文献3,4,5).一方,膠芽腫に対する治療の問題点としては,腫瘍内不均一性,血液脳関門の存在,低い免疫原性(cold tumor)などが挙げられている.これに対して,抗原提示細胞である樹状細胞(DC)にライセート(=自己腫瘍溶解液)を導入したワクチン療法がこれらの課題を克服して,特異的な細胞傷害性を誘導することが注目されてきた(文献6,7).そして2018年には本稿の先行研究において,初発膠芽腫に対するDCVax-Lの生存期間延長効果が示唆されていた(文献8)."
本研究は,Stuppレジメンでも生存延長因子として知られているMGMTメチル化がDCVax-Lの奏功因子である事を明らかにした(HR,0.74,p=.03).筆者らはテモゾロミドとDCVax-Lの相乗効果,MGMTメチル化に伴う体細胞突然変異の増加,テモゾロミド治療に伴う変異の亢進などを原因として推察している.分子学的背景と併せた奏功因子の探索が今後進むものと思われる.
本研究の問題点としては,プラセボ群でも単球採取が行われていた事と先行研究でDCVax-Lの有効性が示唆されていた事による倫理的な理由からクロスオーバー(プラセボ群再発時のDCVax-L皮内注入療法の開始)が許容されており,最終的にはプラセボ群の多くもDCVax-L治療を受けていることが挙げられる.そのため外部対照群(ECP)を設定しているが,ECP群では往々にして患者データが不十分であり,傾向スコアマッチングが行えない点が弱点となっている.マッチング調整間接比較(MAIC)法は近年利用が増加している手法であり,上記の制約を解決できると筆者らは述べているが,患者背景因子のオーバーラップが乏しい場合や,重み付け後の標本数が少ない場合などは結果の解釈には注意を要する.

<コメント>
膠芽腫に対して調整後外部対照群を用いた自己腫瘍溶解液刺激樹状細胞ワクチン療法(DCVax-L)の生存期間延長を示した第3相試験の報告である.本研究結果は,調整後外部対照群との比較試験結果であり,真のDCVax-Lの効果を示すとは言えない.本試験の初期の計画書(v4.0)では,膠芽腫に対するDCVax-Lの有効性を評価する多施設共同ランダム化プラセボ対照二重盲検比較第II相試験として計画されていた.主要評価項目はプラセボに対するprogression-free-survival (PFS)の延長であった.この点では,median PFSはDCVax-Lが6.2ヵ月(95%CI,5.7-7.4),プラセボが7.6ヵ月(95% CI, 5.6-10.9)で有意差はなかった.つまり,初期計画の試験結果としてはDCVax-Lの有効性は認めない結果である.しかし,最終計画書(v7.0)では,試験計画を大きく変えて調整後外部対照群を用いた第3相試験に改定されていた.このため,本論文には、ランダム化したDCVax-L群とプラセボ群の生存期間の比較についての記載がない.また,DCVax-L群のOS中央値は19.3ヵ月であり,実臨床として生存期間が著しく延長した結果とは思えない.これらの疑問点が残ることから,DCVax-Lの真の有効性を評価するためには本当のランダム化第3相試験を実施すべきである.(京都大学脳神経外科 荒川芳輝)

執筆者: 

牧野隆太郎