さすがにASPECTS 3点以下では,血管内治療も有効性を示せない:RESCUE-Japan LIMITの二次解析

公開日:

2022年12月30日  

最終更新日:

2022年12月31日

Association Between Alberta Stroke Program Early Computed Tomography Score and Efficacy and Safety Outcomes With Endovascular Therapy in Patients With Stroke From Large-Vessel Occlusion: A Secondary Analysis of the Recovery by Endovascular Salvage for Cerebral Ultra-acute Embolism-Japan Large Ischemic Core Trial (RESCUE-Japan LIMIT)

Author:

Uchida K  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Hyogo Medical University, Nishinomiya, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:36215044]

ジャーナル名:JAMA Neurol.
発行年月:2022 Dec
巻数:79(12)
開始ページ:1260

【背景】

本邦のRESCUE-Japan LIMITは大きな虚血コア(ASPECTS≦5点)を示す前方循環主幹動脈閉塞に対する血栓回収の有効性をRCTで明らかにした(2022年,文献1).それではASPECTS 3点以下はどうか?本稿は同研究の二次解析で,対象患者202例をASPECTS 3点以下の106例(0~2点:8例,3点:98例)と4-5点の96例(4点:56例,5点:40例)に分けて血管内治療の有効性を検討したものである.ASPECTS 3点以下の患者のうち56例が血管内治療,50例が薬物治療に,ASPECTS 4~5点の患者のうち44例が血管内治療,52例が薬物治療に割り当てられた.

【結論】

ASPECTS 3点以下の患者のうち血管内治療群では12例(21.4%),薬物治療群では9例(18.0%)で,主要アウトカムの発症90日目のmRS 0~3が得られたが,両群間に有意差はなかった(オッズ比1.24;CI,0.47~3.26).ASPECTS 4-5点の患者では血管内治療群の19例(43.2%),薬物治療群の4例(7.7%)で主要アウトカムが得られ,その頻度は血管内治療群で有意に高かった(オッズ比9.12,交互作用p値=.01).mRS良好方向へのシフトはASPECTS 3点以下の患者では2群間で差はなく,4~5点の患者では血管内治療群で有意に大きかった.

【評価】

脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収治療は急速に普及しつつあるが,ガイドライン上は頭蓋内出血の恐れがあるASPECTS 6点未満の大梗塞は適応外か,低レベルの推奨となっていた(文献2,3).日本で実施された多施設研究RESCUE-Japan LIMITは,世界で初めての大梗塞(大きな虚血コア)を対象とした血管内治療と薬物療法のRCTで,2022年2月にその結果がNEJM上で発表された.これによれば,ASPECTSが3~5点(約9割がDWIの所見に基づいて判断,4%はASPECTS:0~2点)の比較的大きな梗塞でも,血管内治療群の方が標準的薬物治療群よりも機能予後が有意に良好であった(文献1).閉塞血管は内頚動脈と中大脳動脈M1がほぼ半数ずつで,約2割は内頚動脈とM1のタンデム病変であった.梗塞領域の体積は2群とも約100 ml.発症から穿刺までの時間中央値は254分(165~479)で,TICI≧2bは86%であった.安全性評価項目では頭蓋内出血の頻度は血管内治療群で有意に高かったが,症候性頭蓋内出血に限れば両群間で差はなかった.現在,このRESCUE-Japan LIMIT研究は,大梗塞に対する血管内治療の有効性と安全性を示すものとして高く評価されている.
RESCUE-Japan LIMITはASPECTSが3~5点の大梗塞を対象とした研究であったが,それでは最重症の大梗塞であるASPECTS 3点以下でも,血管内治療の優位性は揺るがないのか.この疑問に答えたのが本稿で示された二次解析である.その結果は,ASPECTS 4~5点の患者では主要アウトカムの発症90日目のmRS 0~3(機能的自立)は血管内治療群で著明に高く(オッズ比:9.12,CI:2.80~29.70,交互作用p値=.01),有効性が示されたが,ASPECTS 3点以下の症例に対する血管内治療の有効性は示されなかった.のみならず,ASPECTS 3点以下の症例では,48時間以内の頭蓋内出血の頻度は,血管内治療群で21例(47.7%)と薬物治療群の16例(30.8%)に比して有意に高かった(オッズ比:4.14,CI:1.84~9.32,p<.001).
本稿で示された二次解析によって,虚血コアの大きさの指標としてのASPECTS 4点が,2022年段階における急性期前方循環閉塞症例に対する血管内治療の適応限界であろうことが想像される.この事実は,今後,諸外国でのRCTで実証される必要があるが,充分な症例数を対象とした精緻な研究で,これが覆されない限り,ASPECTS 3点以下すなわち最重症の大梗塞に対する血管内治療は相当慎重に選択されるべきであろう.

執筆者: 

有田和徳