頚部内頚動脈狭窄に対するステント留置後の再狭窄のリスク因子は何か:バッファロー大学の12年間632例の検討

公開日:

2024年8月9日  

最終更新日:

2024年8月9日

Residual In-Stent Carotid Stenosis and Cigarette Smoking are Independent Predictors of Carotid Restenosis After Carotid Artery Stenting —— Results from 738 Carotid Artery Stenting Procedures at a Single Center

Author:

Lai PMR  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Jacobs School of Medicine and Biomedical Sciences, University at Buffalo, Buffalo, New York, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:38088539]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2023 Dec
巻数:Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

頚部内頚動脈狭窄に対するステント留置術(CAS)は次第に普及しつつあるが,ステント内再狭窄は4-30%と稀ではない(文献1,2,3).バッファロー大学脳外科は2010年以降の12年間で実施したCASの連続1,017側からタンデム病変などを除外した738側(632例)を対象に再狭窄の頻度とリスク因子の解析を行った.632例の平均年齢は69歳,過去か現在の喫煙者は64.6%であった.ステント後早期の狭窄残存率は平均19±16(SD)%であった.画像による追跡期間中央値は797日(IQR:714-912日).
超音波ドップラーで,ステント側の内頚動脈の狭窄率が >70%となった場合に再狭窄と診断した.

【結論】

738側中124側(16.8%)が,最終追跡までに再狭窄と判定された.
多変量解析で,再狭窄と有意に相関した因子は喫煙(OR:2.3),プラークの不整(OR:0.55,すなわち逆相関),中等度(50.1-75%)の対側の狭窄(OR:3.2),高度(75.1-99.9%)の対側の狭窄(OR:2.8),ステント後早期のインステント狭窄(OR:433)であった.
このうち喫煙者,対側の狭窄率,ステント後早期のインステント狭窄率の複合によるROC解析ではAUC 0.78で再狭窄を予測した.ステント後早期のインステント狭窄率 <28.6%では再狭窄率9%,インステント狭窄率 >28.6%では再狭窄率35%であった.

【評価】

本研究では単一施設(バッファロー大学脳外科)での経験に基づいて,CAS後の再狭窄(>70%)が中央値797日の追跡期間内に16.8%の頻度で生じる事を明らかにした.再狭窄と診断された症例の82%はCAS後2年以内に発生していたが,18%は2年目以降に発生しており,CAS後は長期の追跡が必要な事を示している.再狭窄の124側のうち再治療を要したのは97側(78.2%)であった.
Texakalidisらの17,106例のメタアナリシスでは,CAS後の再狭窄のリスク因子としては,糖尿病,高脂血症,高血圧,腎機能障害が挙がっているが(文献4),本研究では,再狭窄群でこれらの因子の頻度がやや高いものがあったが,単変量解析でも有意の相関はなかった.本研究における多変量解析で再狭窄と有意な正相関があったのは,喫煙,中等度・高度の対側の狭窄,ステント後早期のインステント狭窄であった.この他,白人や長いステントカバー距離は,単変量解析で有意差が示唆されたが,多変量解析では残らなかった.
ステント後早期のインステント狭窄が長期追跡後の再狭窄の強いリスク因子であることは容易に想像可能であり,過去の報告と一致している(文献5).また,喫煙歴が再狭窄のリスク因子であることも過去の報告と同様である(文献6,7).喫煙によって内頚動脈内のマクロファージ由来のメタロエラスターゼの発現が亢進し,これによって血管内皮の過形成→再狭窄を招来すると考えられている(文献8).
CAS後において,これらのリスク因子を有する患者群では特に綿密なフォローアップが必要なことが示唆されている.

執筆者: 

有田和徳