海綿静脈洞内血管腫の治療:29報告409例のメタアナリシス

公開日:

2024年9月27日  

最終更新日:

2024年9月27日

The Treatment Outcomes of Radiotherapy and Surgical Treatment for Patients with Cavernous Sinus Hemangioma: A Meta-Analysis

Author:

Helmy M  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Fudan University Huashan Hospital, Fudan, Shanghai, China

⇒ PubMedで読む[PMID:37480987]

ジャーナル名:World Neurosurg.
発行年月:2023 Oct
巻数:178
開始ページ:e345

【背景】

海綿静脈洞内血管腫は海綿静脈洞内腫瘍の約2%を占め(文献1),中年女性に多く,頭痛や脳神経症状を発症する(文献2,3).その局在と豊富な血流のために摘出手術はしばしば困難を極める(文献4,5).一方,この腫瘍は放射線感受性が高いので,ガンマナイフやサイバーナイフなどの放射線治療が利用されてきた(文献6,7).しかし,放射線照射による脳神経や血管系への影響は懸念材料である(文献7,8).本稿は1999年以降に発表された29報告を対象として,海綿静脈洞内血管腫に対する治療と効果の関係を求めたメタアナリシスである.放射線照射は409例,手術療法は139例で実施された.追跡期間は1-200ヵ月.

【結論】

放射線照射群では,治療後に有意の腫瘍体積の縮小が得られた(加重平均差−17.16 cm3).腫瘍制御率(25%以上の腫瘍縮小)は平均97.1%,外転神経麻痺の回復率は平均91.9%(95%CI:82.3,98.5),視機能障害の回復率は平均95.6%(83.2,100.0)であった.
手術群では腫瘍全摘出率は平均73.2%,術中出血量は平均971 mL(584,1,358),外転神経麻痺の回復率は平均70.6%(51.0,87.7),視機能障害の回復率は平均66.4%(32.4,94.2),恒久的脳神経症状の出現率は平均16.0%(4.6,31.1)であった.

【評価】

著者らによれば,本研究は海綿静脈洞の血管腫に対する摘出手術と放射線照射(明記されてはいないが,大部分がガンマナイフ,一部が寡分割定位照射と思われる)を比較した初めてのメタアナリシスである.
これによれば,手術群の全摘出率は平均73.2%で,放射線照射群では腫瘍制御率(25%以上の腫瘍縮小)は97.1%であった.
脳神経機能に関しては,手術群では外転神経麻痺の回復率は平均70.6%,視機能障害の回復率は平均66.4%なのに対して,放射線照射群では外転神経麻痺の回復率は91.9%,視機能障害の回復率は95.6%といずれも高かった.
また手術群では,出血量は平均約1Lで,新規の恒久的脳神経症状の出現率は平均16.0%であった.
これらの結果を見ると海綿静脈洞の血管腫に対する治療手段としては,ガンマナイフや寡分割定位照射などの放射線照射が圧倒的に有利と思われるが,2つの治療法を直接比較した研究がないので,断定は出来ない.
さらに,再発率を含む長期予後についても不明である.今後の大規模で長期の前向き研究に期待したい.

執筆者: 

有田和徳