外科医は器用だけども悪態をつく!BMJクリスマス・スペシャル2024:医療スタッフにバズワイヤーゲームをさせたら

公開日:

2025年1月4日  

最終更新日:

2025年1月4日

Dexterity assessment of hospital workers: prospective comparative study

Author:

Joseph T  et al.

Affiliation:

Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, Leeds, UK

⇒ PubMedで読む[PMID:39706594]

ジャーナル名:BMJ.
発行年月:2024 Dec
巻数:387
開始ページ:e081814

【背景】

イギリスで1950年代に生まれたバズワイヤーゲームは,プレイヤーが持つ金属の輪(プローブ)を曲がりくねった金属に沿って進ませ,レールに触れさせずにゴールまで到達させるゲームである.レールにプローブが触れるとブザーが鳴り,そのラウンドが終了となる.
英国リーズ大学心臓血管・代謝内科などのチームは,このバズワイヤーゲームを用いて,医療スタッフの器用さを前向き試験で検討した.試験参加者は254人で,内訳は内科医60人,外科医64人,看護師69人,非臨床系スタッフ61人.
レールにプローブが触れブザーが鳴れば,改めてスタート地点から繰り返し,5分間以内にゴールに到達したものを成功とした.

【結論】

成功率は外科医が最も高く84%で,内科医57%,看護師54%,非臨床系スタッフ51%と続いた(p <.001).時間-成功曲線解析でも,外科医は最も速く成功した(logrank p <.001).2分間以内のゴール到達を成功と定義しても,年齢・性を調整して比較しても,やはり外科医の成功率が最も高かった(p <.001).
しかし,この試験の最中に悪態(具体的には文献1)をついたのは,外科医が最も多く50%であり,他の職種では20-30%であった. 
一方,欲求不満や落胆を表す発声(ため息,うめき声,不明瞭なつぶやきなど)は,非臨床系スタッフが最も多く75%で,看護師68%,外科医58%,内科医52%が続いた.

【評価】

外科医は他の職種と比較して器用そうに思われるが,過去の報告を見ると必ずしもそうではなさそうである(文献2,3).
バズワイヤーゲームは1950年代からある簡易なゲームで,手先の器用さや集中力を評価することができる(文献4).日本ではテレビ朝日のバラエティ番組「ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー」内でイライラ棒として登場し有名になった.
本稿はBMJクリスマス・スペシャル2024の一つで,バズワイヤーゲームで,英国リーズ大学附属病院の各種医療スタッフの器用さと集中力を評価したものである.これによれば,成功率ならびに成功までの速度は外科医が一番良かった.
ある意味予想通りの結果と言えるが,これは生来の手先の器用さを自覚していた医学生が外科を目指すことを反映している可能性と,日々の研修や手術で獲得した技能である可能性の両者が考えられる(nature or nurture).どちらが主要な要素であるのかは,一卵性双生児で内科と外科に進んだペア(same nature)をたくさん集めて比較すればわかるはずだ.
一方,ゲームの最中に悪態(例:Sh〇t,Fu〇k)をつくのは,他の職種では20-30%であったが,外科医では最も多く50%に達した.手術中のストレスに抗してスキルを維持するため,外科医の脳で進化してきたメカニズムなのであろうか(文献5,6).
外科系レジデント希望者の面接にバズワイヤーゲームを導入する必要性があるのか,また外科医の腕を磨くために毎日2時間のニンテンドーを課す必要があるのか,さらには手術中の外科医の聞くに耐えがたい悪態を減らすため手術室にSwear Jar(罰金壺)を置かなければならないのかについては,今後の大規模なRCTの結果を待たなければならない.

執筆者: 

有田和徳