公開日:
2025年8月23日最終更新日:
2025年8月24日Predicting the natural history of unruptured brain arteriovenous malformations: external validation of rupture risk scores
Author:
Basilio-Flores JE et al.Affiliation:
Department of Neurosurgery, Hospital Nacional Daniel Alcides Carrión, Bellavista, Callao, Peruジャーナル名: | J Neurosurg. |
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発行年月: | 2025 Apr |
巻数: | 143(2) |
開始ページ: | 490 |
【背景】
脳動静奇形の破裂予測スコアリング・システムはいくつか報告されているが,それらのシステムに関する別施設での外部検証や比較は少ない.ペルー・サンマルコス大学などのチームは,2010年からの10年間で経験した自験の脳動静脈奇形258例(269病変)を基に,既報のスコアリング・システムの外部検証を行った.検証したシステム(リスク因子)はNataf(深部静脈流出,流出静脈の狭窄,流入動脈数/流出静脈など),ARI(脳室周囲あるいは後頭蓋窩局在,単一流出静脈,流出静脈の蛇行),R2eD AVM(非白人,深部局在,サイズ <3 cm,深部静脈流出,単一動脈供給),VALE(脳室系関与,静脈瘤,深部局在,深部静脈流出)の4個である(文献1-4).
【結論】
269病変のうち158病変(58.7%)が破裂していた.ROC解析によって各スコアリング・システムの破裂予測能を評価したところ,AUCはNatafは0.526,ARIは0.521で,識別能なしと判断された.R2eD AVMは0.664,VALEは0.624で識別能はpoorと判断された.
自験例を対象に,4個のスコアリング・システムの構成要素変数を用いて独自の破裂予測のロジスティック回帰モデルを作成したところ,病変サイズ(<3 cm),局在(脳室周囲または天幕下),静脈蛇行の欠如,脳室系関与がモデルに含まれた.このモデルによる破裂予測能はAUCが0.709で,その性能はFairと判断された.
【評価】
脳動静脈奇形の破裂と関連する因子は多数報告されてきたが,一貫して関連が示唆されてきたのは,小病変,深部および天幕下局在,単一流出静脈,深部静脈流出,血流関連動脈瘤の存在である(文献5,6).このうち深部流出静脈と血流関連動脈瘤は再出血とも関連する(文献7).本研究の対象269病変でも,破裂例では,小病変,深部(脳室周囲)および天幕下局在,血流関連動脈瘤が有意に多かった.
本研究の結果,既報の4個のスコアリング・システムで出血リスクの予測能が最も高かったのは,R2eD AVMスコア(文献3)であったが,AUCは0.664で,カットオフ値3以上での出血予測は感度77.85%,特異度51.35%にとどまった.このR2eD AVMスコアリング項目は人種(非白人),深部局在,サイズ<3 cm,深部静脈流出,単一動脈供給の5つからなるが,外部検証の対象になった本研究シリーズの患者は皆ペルー人(非白人)であったため,スコアリングは人種を除いた4項目で行ったという.
そもそも,本研究で検証した4個のスコアリング・システムはいずれも後ろ向きデータから導出されたものであり,前向きコホートの追跡データに基づいたものではない.したがって,いずれのスコアリング・システムも未破裂動静脈奇形の将来の破裂リスクを予測するには多少無理があるのかも知れない.過去の前向きコホート研究で推定された将来出血のリスク因子は,高齢,女性,深部局在,深部静脈流出のみであり(文献9,10),今回とりあげた4個のスコアリング・システムや本研究対象の解析で示されたリスク因子とはやや異なる.
興味深いのは,流出静脈の蛇行がARIスコアリング・システム(AVM rupture index,文献2)では破裂のリスク因子として取り上げられていたが,本研究対象の解析では,むしろ流出静脈の蛇行の欠如が破裂のリスク因子であったことである.流出静脈が蛇行すればAVMからのスムーズな血液流出が妨げられるので,流出静脈圧の上昇→破裂につながりそうであるが,逆であるとすればどのような機序によるものなのだろうか.
やはり,大規模な前向き研究を基に,脳動静脈奇形の将来の破裂リスクを予測するスコアリング・システムが作成されなければならない.それまでは,従来から破裂リスク因子であることが示唆されており,本研究でも指摘された小病変,深部あるいは天幕下局在,深部静脈流出の有無を組み合わせて推測するしかなさそうである.
執筆者:
有田和徳関連文献
- 1) Nataf F, et al. Angioarchitecture associated with haemorrhage in cerebral arteriovenous malformations: a prognostic statistical model. Neuroradiology. 9(1):52-58, 1997
- 2) Mosteiro A, et al. Venous tortuosity as a novel biomarker of rupture risk in arteriovenous malformations: ARI score. J Neurointerv Surg. 14(12):1220-1225, 2022
- 3) Feghali J, et al. R2eD AVM Score. Stroke. 50(7):1703-1710, 2019
- 4) Chen Y, et al. Development and validation of a scoring system for hemorrhage risk in brain arteriovenous malformations. JAMA Netw Open. 6(3):e231070, 2023
- 5) Ai X, et al. The factors associated with hemorrhagic presentation in children with untreated brain arteriovenous malformation: a meta-analysis. J Neurosurg Pediatr. 23(3):343-354, 2019
- 6) Koester SW, et al. Angiographic factors leading to hemorrhage in AVMs: a systematic review and meta-analysis. Neurosurg Rev. 46(1):72, 2023
- 7) de Liyis BG, et al. Risk of in-tracranial hemorrhage in brain arteriovenous malformations: a systematic review and meta-analysis. J Neurol. 271(5):2274-2284, 2024
- 8) Kim H, et al. Untreated brain arteriovenous malformation: patient-level meta-analysis of hemorrhage predictors. Neurology. 83(7):590-597, 2014
- 9) Garzelli L, et al. Risk factors for early brain AVM rupture: cohort study of pediatric and adult patients. AJNR Am J Neuroradiol. 41(12):2358-2363, 2020
参考サマリー
- 1) 破裂した脳動静脈奇形をいつ手術するか:15報1,026例のシステマティックレビュー
- 2) 妊娠中に症候化した脳動静脈奇形の臨床像と予後
- 3) 破裂したSMグレードIV-Vの脳動静脈奇形をどうすべきか:ジョンズ・ホプキンズ大学における84例
- 4) 小脳橋角部脳動静脈奇形38例に対する後S状静脈洞法による摘出術
- 5) 未破裂脳動静脈奇形に対する定位手術的照射(SRS)後の年間出血率は1.2%と低い:1,620例のメタアナリシス
- 6) 未破裂脳動静脈奇形に対するARUBA研究(内科治療 vs 侵襲的治療)の最終追跡結果(平均追跡期間50.4ヵ月)
- 7) 脳動静脈奇形(AVM)の自然閉塞の頻度と予測因子:ジョンズ・ホプキンス大学の経験とレビュー
- 8) 脳動静脈奇形破裂による脳出血の長期的予後予測に新たなスコアリングを提案:RAP score
- 9) 出血した脳深部のAVMの予後
- 10) ARUBA研究対象基準に一致する未破裂AVMに対する侵襲的治療は許容されないのか:13研究1,909例のメタアナリシス