Vol.1, No.2, P.12 公開日:
2016年9月17日最終更新日:
2021年1月7日Minichromosome maintenance protein 7 as prognostic marker of tumor aggressiveness in pituitary adenoma patients.
Author:
Coli A et al.Affiliation:
Deparment of Anatomic Pathology, Catholic University, Rome, Italyジャーナル名: | Eur J Endocrinol. |
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発行年月: | 2016 Mar |
巻数: | 174(3) |
開始ページ: | 307 |
【背景】
最近,細胞サイクル調整蛋白であるミニ染色体維持蛋白7(MCM7)が脳腫瘍を含む種々の腫瘍におけるaggressiveness(攻撃性)と相関していることが報告されている.ローマ,カトリック大学のColi Aらは下垂体腺腫におけるMCM7の発現が臨床的予後の指標となり得るか,Ki-67との比較において検討した(n=97).
【結論】
Cox解析では,MCM7 の高発現(>15%)が腫瘍の進行・再発と直接に相関していた(relative risk:7.70).Ki-67高発現(>3%)はそうではなかった(RR:0.99).MCM7高発現群では腫瘍の進行・再発までの期間は短く,MCM7 の発現率は5年後の腫瘍の進行・再発率と相関していた.
【評価】
一般的に腫瘍細胞の生物学的活性の免疫組織学的な指標としてKi-67が用いられるが,必ずしも腫瘍の悪性度や予後と相関しないことも多い.MCMファミリー(MCM2-7)はすべての真核生物で維持されており,6量体として後期分裂期とG1期の染色体と固く結合し,S-G2期には分離している.このため,MCM蛋白は通常の体細胞での発現は稀で,複製期にある細胞核にのみ発現する.最近,MCM蛋白,その中でも特にMCM7蛋白が種々の腫瘍において高発現することがわかってきた.また,その高発現は予後不良と相関することも示されてきた.
本研究は下垂体腺腫に関しては最初のものであるが,MCM7がKi-67よりも治療の転帰と良く相関することを示した.本邦でも追試されるべき重要な知見である.また,下垂体腺腫の薬物反応性との関係も気になるところである.
執筆者:
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参考サマリー